アレから三日経った今日、俺は久しぶりの学校に来ていた。朝から教室に入れば政宗たちは驚いていて、龍はなんだか喜んでたけど切なそうな顔で見てきた。…きっとわかってるんだ。俺が今日することを。そう、俺は告白しようと思った。フラれても嫌われても構わないから、ただ一心に気持ちを伝えたい。陽榎ちゃんが真っすぐ俺に伝えてくれたように。俺だって真っすぐありたい。
で、告白…今日するんだなんて思いながら一日を過ごしていればいつの間にか放課後になっていて、あぁ心臓がうるさい。陽榎ちゃんの笑顔を思い出せばよけいに辛くなって、苦しくなって、でも嬉しくて幸せだ。いつだって陽榎ちゃんがいるから一喜一憂していたんだ。あぁ、俺様もうべた惚れ通り越して溺愛してるのかな?なんて思っちゃう。
「佐助帰るぞ!」
「あっ、うん!」
「Ahー?あれ陽榎じゃねぇか?」
「あっ、本当だ陽榎ちゃんだね!」
「うそっ!?陽榎ちゃん来てんの!?」
「来ておるぞ佐助、って佐助ぇえぇ!?」
旦那の声なんて無視して気がつけば足は勝手に動いていてもう階段を降りていた。会いたい、会いたい、会いたい!そんな気持ちが俺の心を支配していく。下駄箱にでれば上靴を靴箱に放り投げてシューズをはいて急いで外にでる。一歩、一歩重たいような足を進めて行けば門に寄り掛かりながら誰かを待っている陽榎ちゃんを見つけた。たった3日会ってないだけなんだ。あの俺の家に来て、それから会わなくてもう3日経ったんだ。それだけで俺は君を恋しく思う。あの数十時間会えなかったときとは比べものにならないほどに君が恋しい。大好きなんだ陽榎ちゃんが。
「陽榎ちゃん!」
「佐助さん!」
「どうしたの?もしかして龍に用事?」
俺ってなんでこんなことしか言えないんだろ。陽榎ちゃんだって驚いている。龍って、なに俺恋敵に勧めるようなこと言ってんの。陽榎ちゃんが好きなんだろ。しっかりしろよ猿飛 佐助!そんなふうに考えていれば陽榎ちゃんが「いえ、違います」と言った。違う?たしかに今、そう彼女は言ったけどもしかして、俺?そんな淡い想いを抱きながら陽榎ちゃんを見ればニコリと微笑んでくれて、…ああ、陽榎ちゃんって本当に俺様の心を射止めるのが得意。多分、少し顔が紅いんだろうな俺。
「私、佐助さんに用があるんです」
「へー、そう龍に…………って俺様あぁあーーーっ!!!???」
「は、はい!」
「そ、そうなんだ!俺様に用なんだね!!あははっ!」
え、え、本当に俺様に用だったなんて、俺まじで嬉しい。もう絶対に俺の顔真っ赤。本当に陽榎ちゃんって心を掴んで離さない人なんだよな。嫌いになれない彼女を見れば幸せそうに、でも嬉しそうに俺を見ていた。期待、しちゃうじゃん陽榎ちゃん。俺、本当に勘違いしちゃう。
「あの、ね陽榎ちゃん」
「はい」
「俺も、陽榎ちゃんに用があったんだ」
「えっ…?」
「一緒だね」
「はい!」
元気に笑う姿はやっぱり君らしい。そしてあのお風呂場での出来事は今でも忘れれない。確かに、裸ってのは驚いたし、それにもやがかかって見えなくて残念、ってそんなことない!じゃなくて、陽榎ちゃんが優しく抱きしめてくれたとき、嬉しかった。俺は弱くてもいいんだって思った。あんなにも情けない姿でも俺は猿飛 佐助なんだって教えてくれた。そんな太陽のような陽榎ちゃん。でもやっぱりなんだか気恥ずかしくて「あのあとケガとかしなかった?」「はい、途中まで佐助さんが送ってくれましたから」なんて話しを反らすようなことを言ってしまう。緊張して手に汗を掻いて、口もカラカラで、2文字がでない。勇気をだせ佐助!
「陽榎ちゃん、あのさ覚えてる3日前のこと…?」
「…はい」
「俺、ねピエロって言ったでしょ」
「……」
「けど俺違った、親の前じゃそうなんだけど、…あっ今はちがうよ!まぁ、それでね一人の女の子の前じゃピエロじゃいられなかった」
「女の子?」
「うん。その女の子といると感情が全部表れてきた、次第にいろんな気持ちをその女の子に持つようになった」
そう。陽榎ちゃんを見ていると隠していた自分の本性が表れて、自分でいられなくなった。喜怒哀楽も愛しいも全部、ぜーんぶ陽榎ちゃんといなきゃ、出なかったんだ。気がつけば会ってすぐに恋に落ち、約二週間位のエピソードだったのに、陽榎ちゃんがいないと苦しくなった。だからね、陽榎ちゃん俺言うよ。
「その女の子ね、女子高に通っていて、勉強も少し苦手な子」
「っ、」
「でね、酷い喘息を持っていてほとんどの運動できないんだよ」
「、それって…」
「そう。陽榎ちゃんのこと」
「佐助、さん…」
「会って二週間程度だから信じれないかもしれない。でも、本当なんだ」
「…」
「好きだよ陽榎ちゃん。こんな弱い俺だけど…陽榎ちゃんを誰よりも好きな自信がある。いや、絶対に俺だけだよ」
「佐助、さん!!!!」
「うわぁ!」
まっすぐに陽榎ちゃんを見ていればいきなり抱き着いてきた。ちょ、ちょっ陽榎ちゃん俺の心臓が持ちません!っ、ドキドキする。告白って思ってたより緊張する、怖い。今までに告白されたことあったけどするのってこんなに緊張するんだ。今まで俺、無下に扱ってたけど、本当に苦しいんだこれ。
「陽榎ちゃん…」
「私、も気がついたらある人を目で追っていました。そして、いないと、見えないと苦しかったです」
「っ!」
「でも、でも!その人が今、私の目の前で私を好きと言ってくれたんです!」
「へっ…えっ、えっ、まさか…」
「私も佐助さんが好きです!佐助さんを好きな気持ちも誰にも譲れない!!」
「あっ…えっ、俺ら両思い?」
「はい!」
「…った……やったあああああああ!!!!」
ぎゅうとこの小さな体を抱きしめれば俺の後ろに回る彼女の腕。君のことを想い、君を誰よりも幸せにしたいと思った。そして、初恋は実らないって言った奴に言ってやりたい。俺らにはそんなことないんだって。
そんなことを想いながら初めて、唇へとキスを贈った。
純愛ヘブン
(初恋な毎日)
(大好きな君との毎日)
(それは、ね)
(純愛の塊なんだ)
20100321 The end!!