「陽榎ちゃんお家に上がってってね」

「えっ」
「へっ」

「そうだな。いたるところ汚れているからお風呂も入ってくれ」

「そ、その…!」

「陽榎ちゃん遠慮しないでいいよ。行こう」


抱きしめられた後、急に佐助さんのお母さんとお父さんから出た案。しっかり聞くと驚くことで、え、え…佐助さんに手を引かれてしまいますし、これって行かなければ…。お風呂って、はは恥ずかしいですが、その、佐助さんに手を握られていてもっと恥ずかしいです…。さっきだって佐助さんに抱きしめられて緊張してしまいました。最初は本当に恥ずかしくて、緊張して、でも佐助さんが優しく抱きしめてくれたから私も彼の背中に手を回してしまい、ああこんなにも私は彼を好きになっていたんですね。今、繋がれている手を離したくない。佐助さんは嫌がるかもしれないけど、傍に…いたいよ。









「はぁ…」


お風呂に入りながらゆっくりと息をつく。佐助さんのお家のお風呂はすごく大きくてやっぱりすごい家なんだって思います。佐助さん、さっきからすごく優しい。壊れ物を扱うかのようにすごく丁寧に慎重に扱ってくれて、嬉しいけど、なんだか違うような気がするんです。だって…。


「陽榎ちゃんー?」

「! さ、佐助さん!?」

「着替え置いとくねー」

「は、はい!ありがとうございます!」

「いいえー。どういたしまして!!」


やっぱり…やっぱり佐助さんは優しく接してる。確かに優しく接してくれる佐助さんは好き…でもそれじゃ違うよ。私、佐助さんの優しさでも違う優しさがすきなんです。


「佐助さん…」

「どうしたの陽榎ちゃん?」

「どうして壊れ物のように扱うんですか?」

「え、」

「私、壊れません。喘息がありますけど私壊れませんし、逃げません。だから、その普通に接しては、いただけませんか?」


私は、私を私として扱ってくれる佐助さんの優しさが好きなんだ。だから、今ここで壊れ物のように扱う優しさは…違います。私が佐助さんを好きになれたのは佐助さんが私を見てくれるから。だから、わがままかもしれないけどそんな佐助さんが好きなんです。今だに返事がなくて、だんだんと気持ちに恐怖が表れてきた頃、自然と私はお風呂場の入口に近づいていた。入口から伝わる緊張。ああ、怖い。佐助、さん。


「陽榎、ちゃん…」

「は、はい!」

「そう、だよね。俺なにかを勘違いしてた」

「……」

「陽榎ちゃんは消えない、壊れない…俺が陽榎ちゃんを突き放したからどこかで怖がってたんだ…ごめんね」

「私、は…」

「陽榎ちゃんが悪く思わなくていいよ。俺が、弱かっただけなんだ」

「っ…佐助さん!!」

「え、って陽榎ちゃあああああああんんんんっ!!!???」


「そ、そんな格好で出てきちゃダメでしょ!!!!!」なんて佐助さんは叱咤するんですが、格好が裸なんて気にしてられません。入口を勢いよく開けて佐助さんの胸に飛びつきぎゅっと背中に手を回す。佐助さん、佐助さん、私、ね…初めて見たよ佐助さんの弱いところ。そんな佐助さんを見ても嫌いにならないの。こういう、愛しいや大切って気持ちなのかな?包んであげたくて一人にさせたくないって思っちゃう。ああ佐助さんが愛しい。


「佐助さん…私はそんな佐助さんでいいです」

「うぉっ!(陽榎ちゃんの胸が…!)」

「だって、私はそんな佐助といるのが好きだから!」

「〜〜っ!(す、好きって…!好きって言ったぁああああ!!!!)」


もっとその気持ちが伝わるようにぎゅっと抱き着けばなんだか佐助さんの体が硬直してしまい、どうしたのか上を見れば…なんだかあわあわした佐助さんと目が合い、えっ?どんな早業なのか、気がつけば佐助さんが上に羽織っていた陣羽織みたいな着物でぐるぐる巻きに。不思議に思い目を向ければ「風邪ひいちゃうから」と優しく微笑んでくれました。あっ、これだ。私の大好きな佐助さんの姿。忘れないようにじっと見ていれば照れたようにはにかんで私の手をぎゅっと握ってくれた。暖かくて暖かくてこの温もりに目を細めればいつの間にか佐助さんの顔が近くにあり、少し…驚きました。


「陽榎ちゃん、俺やっぱりね…」

「、佐助さん?」

「うんん。今はいいよ、でもありがとう」

「へっ?」

「ありがとうだけ受けとって」

「はい、!」


じっと見られて緊張して、でも佐助さんが好きで、私、おかしい。佐助さんがなにを言おうとしていたのか気になりますが、佐助さんと仲直りできたようなのでいいです。



繋いだ手と手
(私たちに言葉はいらない)
(だって、)
(手から伝わるんだから)








ヒロインはいざとなると大胆
20100321
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