きてない、そうため息ををつきながらもう一度携帯を見る。何度見たって変わらないって分かっているのに、なのにやっぱりこの手にある携帯が気になってしまう。私がなにかしちゃったのかなと思うけどなにをしたかなんて全くわからない私にはどうすることもできなくて、佐助さん。佐助さん…。
学校行かなくちゃ、うん。でもこんな顔で行かなきゃいけないだなんて無理だよ。きっとまた泣いちゃう。もしも佐助さんが私を嫌いになってて、それでばったりあって無視なんてされたら私、絶対に大泣きしちゃう。
怖いよ。怖いよ。足がすくんで前に進めない。なんで?なんで?こんなこと初めて。こんなにもなにかが怖いなんて。


「陽榎ー?」

「(龍だ…)っ」

「どうした陽榎?具合悪いのか?」

「…っ…りゅ、龍!」

「陽榎!?」


慌てたように入ってくる彼。普段よりも驚いた顔をしていて私を見る龍は酷く困惑していて次第に顔が青ざめていった。
なんでなのかな?こんな時でも佐助さんに会いたい。側にいてほしいって思う私はおかしい。


「どうしたっ!?喘息か!?」

「うんん、違います…」

「じゃあ、いったい…」

「苦しいんです、昨日から全く…佐助さんと連絡とれないんです…!」

「!」

「喘息になるより苦しいの…!胸の奥が締め付けられて痛いんです!!」

「陽榎…」


そう。喘息になるより苦しくて、胸が締め付けられる。なにかを一心に求めるのに手に収まらなくてもどかしい。佐助さんを見てるとドキドキして胸がキュンとして、でもなにかがもどかしい。そしてなにかが変わると怖いの。それでも彼が笑うと幸せで、些細なことにも幸せを感じてしまう。
おかしいんだ私は。こんな気持ち知らない。一歩も前に歩けなくなるほど動けないなんて。


「陽榎、佐助は今本家に帰ってるんだ」

「本、家?」

「ああ。アイツは幸村んとこに世話になってたんだが、昨日帰ってな」

「そう、なんですか…」

「でもな、アイツの家には問題があって…」

「!」

「多分、一ヶ月は連絡がとれねーし学校にもこねー」


目の前が真っ暗になった。嘘ですよ。佐助さんにそんなに会えないなんて、私いやです。なんでなんで?問題?家庭の問題…?私はいつも私のことを考えている佐助さんは知ってる。でも私は?私は佐助さんのこと何一つ知らない。そんな私が佐助さんと連絡をとってもなにがしたいの?私はお邪魔じゃない。別に佐助さんにとっての特別な人じゃない私が行ったって無駄だよね。


「おい陽榎」

「龍?」

「佐助の家行くか?」

「!」

「気になるなら行った方がいいだろ」

「っ、無理ですよ…私、佐助さんとは友達なんですから」


そう、結局は行ったって私は意味がない存在。だったら始めから行かない方がいいに決まってる。
胸が痛いのだって友達が離れていく辛さと同じもののような気がする。だから、いいんです。わからない気持ちにくしゃくしゃになるのはいやですから。また色々起きるのは嫌。龍に迷惑かけちゃうから。だからいいんです。


むにーっ

「りゅ、りゅふぅ!?」

「我慢すんな!会いたいんだろ!?じゃあ会いに行けよ!!」

「だって、私…」

「知らなかったら知ってけよ!佐助だってそうやって知っていったんだろ!?」

「!」


なにが意味ないんだろう。そうやって決め付けてるのは私だ。
佐助さんは私のことたくさんたくさんいつも聞いてくれた。わからないことは分かろうとしてくれた。なのに私は知らないのに諦めようとしてたんだ。
知ってないのに諦めちゃダメじゃない。私は佐助さんのことが知りたい。佐助さんの声が聞きたい。佐助さんに会いたい。
もしかしたら追い返されるかもしれないけど私、頑張ろう。


「龍、私行きます」

「あぁ。行くぜ陽榎!」


この時の私は全く自分の気持ちなんて気がついていなくて、龍をこんなにも傷つけていたなんて知らなかった。だからこんなにも自由に気持ちを整理出来たんです。



やっぱり君はナイト様
(まだ見ぬ大好きって気持ち)






20100209
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