深い森を歩く者たちがいた。
森は何処までも深く、そして先の見えないような闇だ。
見えない闇であるにも関わらず、ある者たちはただひたすら歩き続け、目的地を目指す。

ある者は従者を、ある者は大事な家臣を、ある者は猿を連れていた。
武将であるが故にその手には刀や槍、碇などがしっかりと握られており、武将たちの顔は重苦しい者もあれば、楽しみな者、そして関係ないといった顔をして三者三様である。
目的地を目指し、森をゆっくりと歩く。
次第に開けていった場所へと出始め、ようやく目的地の社が見えてきたかと安堵のため息を全員がついたとき、別々の方向から歩いてきた武将たちと出会ってしまった。


「AH?」
「なっ」
「むぅ!」
「あはー」
「げっ」
「ふん」
「あちゃー」


辺りを見渡せば自分たちにとって敵武将がいる。
ましてや出会った場所が場所なだけに皆の顔が露骨に歪む。
何故このような場所に彼らがいなくてはならないのか、ましてや何故今なのだ、と皆が同じことを思ったのは仕方ないだろう。


「ま、政宗殿!!??何故このような場に…!!」

「Ahー?そりゃこっちの台詞だ真田 幸村」

「いやー奇遇だねぇ!!これも縁ってやつだよな!!」

「我はこ奴ら阿呆共との縁など信じぬ」

「阿呆共って…相変わらずだな毛利…」

「てめぇがここに来るってことは…」

「あははー右目の旦那もー?」


やけに最後に発せられた言葉へ皆の意識が向く。
も、ということは自身も同じということである。
そのような意味から捉えても段々と彼らが来た目的が明るみになる。
しかし、情けないことにその理由を言えないのが彼らの心理状態だ。
言葉にしてしまったらなんと情けないことだ。
決して言うわけにはいかなかったのだ。


「ここで出会ったのが何かの縁ならBattleといこうぜ真田 幸村ぁ!!!」

「受けてたちますぞ政宗殿ぉ!!!」

「鬼が、ここが貴様の死に場所よ」

「鬼がんなとこで死ぬわけねーだろ!!」

「はぁ…なんでこうなるかなー」

「政宗様の邪魔はさせねぇ、わかったか真田の忍」


我先にと手が刀やクナイ、輪刀などに伸びていく。
掛け声を合図にするかのように皆の殺気が膨らんでいく。
その瞬間頭を過ぎ去るのは戦場の場面。
−−やらなくては、自分がやられてしまう。
それが分からないほどの子供ではない。
ましてや背負うものが自分たちにはある。
故に彼らにとって考えついた結論は珍しくもない。
しかし、たった一人は違っていた。


「あんたら戦うことしかできないのかよ」

「風来坊、てめぇはとことん甘いな」

「そーそー。右目の旦那の言うとおりだよ風来坊」

「はぁ…そんなんじゃ愛する人を守れないよ」

「守るのは女だけじゃねぇ!!自分の決めたもんだってそうだ!」

「わかってないよ元親。それじゃ愛する人も大切な奴らも幸せにできない」

「当たり前じゃ。こ奴らに人を幸せにする事など出来ぬわ」

「「「!!??」」」


静かな森林に響き渡った声。
それは誰しもが研ぎ澄ましていた神経を驚かせるには充分な声だった。
さっきまで張っていた雰囲気はなくなり、声がした方へと自然と顔がむく。
なぜなら、その声こそが自分たちが来た原因なのだから。
各々しかめっつらをしたり、睨んだり、笑顔だったりと色んな顔をしているのもしかたがないだろう。


「貴様らよく来たのぉ」


重く吐き出した声は彼らの耳によく響いた。
そして、言葉を吐き出した老人はぎろりと細い目を更に細くして彼らを睨みつける。
流石に凄むことはなくとも、一瞬だけ彼らは気まずいと思った。
そんな老人の容姿は長く白い髭は顎から無造作に下へと伸びている。
また、服装は仙人のような格好をしていて、初めて見た時は物語に登場する仙人ではないかと思えてしまう。
しかし、老人は仙人ではない。
老人は…−−神である。


「あんたが来いって言ったんだろーが」

「当たり前じゃ。貴様らには罰を受けてもらわなければならぬ」

「何故でござるか?」

−−ピキッ


その真田 幸村の何気ない疑問が老人の逆鱗へと触れてしまった。
それは誰もがわかった雰囲気の変化である。
その苛立ちが伝わり皆の背筋に嫌な汗が落ちる。
第一、その単語は言ってはいけないものであった。
ここに来た者ならば誰しもがわかる簡単なわけ。
罰を受けなければいけないのは自分たちの行いのせいであるのだから。


「貴様ら反省して来たようではないな…!!」

「いや〜あはー」

「社を半月に百以上も壊すような奴ら絶対に許さんわー!!」


そう、神が怒っていたのは彼らが戦で社を壊していったことである。
それも一月に1個や2個と少ない数ならばよかったのだ。(むろん。どんな理由があろうと社を壊してはいけないのだが)
流石に一月に百以上壊されては神にとってもたまったものではない。
日に日に増えていく社の破壊。
見るに見兼ねてついに先日、この破壊行為を繰り返す諸悪の根源(戦の頭領)に物申したのであった。
しかし、最初は急に現れた神を彼らは信じようともせず、むしろ鼻にもかけていない。
それゆえに神も余計に怒りが増長したのであった。(もちろん、そんなふざけたことを吐かした彼らにはそれ相応の処罰が加えられた)
そんなことを理解させた上で今回この場に呼んでいるのに、こんな返答をされれば神の怒りが増長するのも当たり前だろう。


「Shit!真田よくも余分なこと言いやがったな!」

「す、すまぬでござるー!!」


今さら謝罪をしたところで時は既に遅く…−−もう怒りは爆発していた。


「謝罪など聞かぬわ!!!貴様らなど異世界に飛ばしてくれる!!!」

「「「なっ!!??」」」


そう言った瞬間に彼らの足下が光り出し、自然と体が浮く。
そして、周りをを一望し始めて一瞬にして景色が変わった。
−−神の「生半可な気持ちでは帰らせん!」と言っているのを聞きながら。
ぐるぐると変わっていく景色に彼らの焦りはピークへと達していた。
神への怒りは膨らむが、今から自分たちはどうなってしまうかという不安もある。
だが彼らはまだ知らない。
この異世界への旅こそが彼らの人生さえも変えてしまうとは…−−。



交わり続ける世界
(帰ったらあの腐れgodぶった斬るぜ小十郎!!)(承知しております。政宗様)(旦那!?なんでそんなに楽しそうなの!?)(何を言っている佐助!コレも鍛錬だ!)(うぉ!?毛利なにしやがる!!)(ふん。鬼が我に触れるでない)(あちゃー。先が思いやられるねぇ)






加筆修正20111129
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