夢で見た真実!





昼間は梅林先輩に柳先輩が教えてくれたことを話した。
別に先輩に成仏してほしいわけじゃない。
むしろ逆で、まだまだ俺の傍に居てほしい。
先輩と話すのは楽しくて、女でも俺の容姿を見るんじゃなくて中身を大事にしてくれる。
今まではそんな女いなかったから毎日が楽しいんだ。
消えてほしくない日々になっていて、テニス以外で初めて見つけたもの。
子供みたいかもしれねーけど手放したくねぇ。
だからこそ先輩に未練がないか確認するために話したんだけど…やっぱりあの様子だとあるんだよな。
何たって深刻に悩んでたんだからよ。
だけど絶対に思いださないでくれ、なんて願いながら俺は寝るしかなかったのだった。

そして、その時に見た夢が全てを変えてしまうのだった。



*********



俺はこの日に練習試合が入っていた。
立海ならよかったんだけどそれは他校での練習試合だった。
けど、いつものように遅くまでゲームをしていた俺はいつものように寝坊をしてしまい、遅刻しないためにも必死にテニスバックを持ちながら走ってたんだ。
んで、近道のために公園を突っ切ろうと思って中に入っていったんだ。
だけど、その入っていた瞬間に聞こえた声に俺は立ち止まってしまった。


「にゃーにゃー!!!!」

「大丈夫だぞ子猫!私が今すぐ助けてやる!」


どこか怯えたような声で鳴く猫の声と、必死な女の声に俺は自然と探すように木の方角を見てしまう。
そして、視界に映ったのは結構な高さがある木に女が登っていて、枝の先にいる子猫を助けようとしているなんともベタなシチュエーションだった。
けど、それが笑えるとか有り得ねぇとか思うわけじゃなくて、あぶねぇと思ったのが率直な感想だ。
だってそうだろ?バランスなんて崩したものなら落ちて骨折だ。
そう考えりゃ誰だって同じことを思う。
なによりも真田副部長みたいな話し方をしている女は、本当に真っすぐな奴みたいで猫を助けることに必死になっている。
そう思うと俺の落ちたっておかしくないって発想は間違いじゃねぇ。

だから、もう身体は動いていた。

テニスバックを地面に投げて、久しぶりに全力でその木まで走っていく。
ただ俺の視界に映るのは、子猫を助けようとしている女だった。


「おぉ!よくやったぞ子猫!」

「にゃー」

「ははっ!いい子だな…−−え…?」


案の定女は子猫を助けたことに安堵して木からバランスを崩して落ちてしまった。
女は予測していなかったのか目を丸くして今落ちた位置を見つめている。
当然そんなことしたって戻れる場所ではないからただ緩く手を伸ばしているだけだった。
だから余計に俺は足に力を入れるのだった。


「ひっ!?きゃあああっ!!!!」

「うおぉおぉぉっ!!!!!」

−−ドンッ!!!


女が地面に落ちてしまう瞬間に無理矢理足を捩込ませて、なんとかその身体を救う。
だけど走ってきた勢いは衰えることがないから女を抱え込んだまま背中からスライディングをして思いっ切り木にぶつかる。
別にその痛みが酷く痛いとか、最悪だとか、女を助けてやったとかそんな感情は一切なく、ただ…−−腕の中にいるこの女が怪我をしなくてよかったって思ったんだ。


「ーっ」

「え、あ!!!き、君!!」

「あ、大丈夫か?怪我は?」

「ないです!問題もないです!」

「そっか…よかったぜ!」


怪我がないと聞いた俺は、さっきまで力んでいた肩の力を抜いて安堵したように笑ってしまった。
そのまま女を至近距離で見てたんだけど、後ろから聞こえた携帯電話の鳴る音に俺はサッと顔色を変えて慌てて女から離れた。
これは決してこの女と至近距離にいて恥ずかしかったからとかじゃねぇ!
なんたって思い出さなきゃよかったことを思い出しちまったから慌てて離れたんだよ。
そう−−恐怖の化身幸村部長と真田副部長のことを思い出したのだから。
なんで思い出したんだよ俺!!!


「うわあああっ!!!やべぇ!!!」

「あ、しょ、少年!!!」

「あ!!次はんな危ないことすんなよ!!!気をつけてな女!!!」

「え、へ…」

「んじゃーなー!!!!」


後ろで俺を呼び止める声が聞こえたが、聞こえないふりをして言いたいことを女に言って俺はテニスバックを持って必死に公園を走り抜けた。
幸村部長と真田副部長に怒られませんよーに!!と願うのはいつものことだった。



*********


懐かしい思い出を夢として思い出した俺は、眠っていた瞳を無理矢理刮目させた。
そして、驚いちまった。


「あれ…梅林先輩だったんだ…」


ポツリと呟いた俺の声は一人しかいない部屋にはよく響いた。
そして、次第に嬉しさが増していったことに気がついた。
だってそうだろ?
俺は…俺たちは立海で初めて会ったわけじゃねーんだから!!
それがあまりに嬉しくて女みたいにきゃっきゃっと俺ははしゃいでしまった。


「明日、先輩に教えてやろう!!!」


嬉しさを共有したいがために俺はそんなことを呟いた。
だけど、これが考えちゃいけないことなんて俺は知らなかったんだ。
だったら全ては変わってたのか?





20120815


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