とんとんとリズミカルに階段を降りて教室へ向かう。
沢田くんはサボっていたけど沢田くんの傍にいつもいる彼らは多分教室にいる。
私が帰ろうにも荷物は教室。
しかたがないけど行かなきゃいけない。
はあ、会いたくないなー。
−−ガラガラーッ
「誰だ!?授業ちゅう、に…」
「…すいません」
「い、いや!気にするな伊賀!!」
こんなやり取りにも慣れてしまったな、なんて改めて思う。
昔はそんなふうに冷めた気持ちにはならなかった、うんんなろうとは思わなかった。
ましてや普通でありたいと願っていたから。
教師がこんな態度とるのはおかしいかも知れないけど、これは以前あったイジメのせい。
イジメは今はないけれど。
−−雲雀先輩がイジメに加算していた、それは私に対するイジメが公認とされていて、黙認するべきであるということを示していた。
だから無実だと私がわかった今は雲雀先輩も手をださない。
ましてや今は私を助けるくらい。
そんな状態だから教師も決して手をださない、だしたら最後。
彼らはボロボロになるまで咬み殺されてしまう。
私には関係のないことだけど。
「私、早退します」
「あ、ああ!!」
「それでは」
なるべく誰も視界に入れないように自分の机までいく。
机まで着けばかけてあるバッグに荷物を軽く詰めて持つ。
ふと視線を感じたのでそちらに目を向ければその先にいた沢田さんと笹川さん。
全くと言っていいほどにもう話していない彼女たち。
ああ、黒川さんもクロームさんも三浦さんもそうだっけ。
−−とにかく馬鹿な女の子たち。
思い出という思い出はとてもない。
在るのは、−−腐った思い出だけだ。
『私、沢田 吉野!吉野って呼んでねひかりちゃん』
「私のものにならない貴女なんてだいっきらいっ!!消えてよ!!!」
ハジメテ、ハジメテ私がトモダチと呼べる存在だった。
忍の私にはあまりにも綺麗過ぎた存在で、大切で大好きだった。
『わぁーっ!ひかりちゃんって体育得意なんだー。凄いね!!』
「最低だよ!伊賀さんはイジメなんてするような人には見えなかったのに!!」
特別になんてみなくて、普通に接してくれた。
それがどんなに嬉しかったのか今でも覚えている。
『アンタはアンタ!しっかりしなよ、ひかり』
「近寄んないでよ!あんたなんてもう友達でもない!!」
里には大人びた人もいた。
けど、それとは違う優しさをくれる人だった。
友達だと思っていた。
『ひかりのそういうところ…好きだよ?』
「吉野様に最低なことしたひかり…貴女は敵だよ…!」
戦う者同士で解りあえることがあった。
それが私の光でもあったの。心の支えでもあった。
『ハルと一緒に恋をしましょう!ひかりちゃん!!』
「吉野さんに暴力を振るった人をハルは信じれません!!」
わかってくれると、彼女のまっすぐな性格ならわかると信じていた。
だってまっすぐでとても綺麗な人だったから。
けど、なにも関係なかった。
友達なんてなんともない関係。
信じてと願っても誰ひとり私なんて信じてくれなかった。
私の存在なんてその程度だった。
−−結局まやかししかこの世界は存在しないと知った瞬間でもあった。
「…………」
ジーッと見てくる沢田さんと笹川さんに視線を向けてゆっくりと口を動かす。
「 」
なんて言ったのか伝わったのか、ひどく驚いたように目を見開き、そして悲しそうに瞳を潤ませる。
ねぇ、なんでそんな顔するの?
私、わからない。
前も今も…貴女たちが私にはわからないよ。
そう思いながらも逃げるように教室から出る。
ああ、世界はやっぱり汚い。
浮いた席
(『友達ってなんですか?』)
20101003