世界を綺麗だなんて思ったことはない。

だって世界が綺麗なんて言えない。
どこかで起きている紛争も、殺し合いもすべて汚い。
なによりもその世界に生きている人間なんてもっと汚い。
そう考えるようになってしまったのは忍者として教育されていたとき。

私には尊敬していた友がいた。
尊敬していた友は優秀で直ぐに主が決まった。
だが、そこで私は知ってしまった。
人間が、ただの人間風情がとても汚いことを。
彼女は主にボロ雑巾のように扱われ最後は−−死んでしまった。
それを見てからだ。
私に冷めた考えが浮かんだのは。

嫌い、嫌い、嫌い、嫌い、嫌い!
友を殺した主も、世界も、人間も。
そう思っていた矢先に彼らは現れた。

優しくて、暖かくて、安心できる。
綺麗で素晴らしい世界を私にくれた。
嬉しくて、嬉しくて、どうしようもなかった。
けど、−−平穏なんて結局なかった。

そんな世界を彼らが壊した。
ああ、やっぱり世界は無常だ。


「………」


風がヒューヒューと吹く。
独特の緑色の髪が揺れる。
だれもいない屋上。
今は授業中だからいないのは当たり前か、なんて嘲笑しながら下を見下ろす。
周りがよく一望できる屋上は好き。
けど、人間が見えるのは嫌。
そんな冷めた気持ちを持ちながら上を見る。
今日は空、澄んでいてすごく綺麗。
器用にカシャカシャと音を起てながらフェンスの上を歩いていく。
忍の私には簡単すぎて余計に笑える。

世界って簡単すぎるのかな、?


−−ガチャリ

「ん?」

「あれ、って…なあ!?」


音がして振り返れば独特のツンツンした髪が見えた。
あれ?私こんなにも鈍ってたかな?
相手の気配に気がつかないなんて、修行のやり直し決定だね。
あまりにも自分のことに気を取られていたのか、彼が近くに来ていたことに気がつかなかった。
…やっぱり修行しよう。
茶色のツンツンした髪の毛。
琥珀色の綺麗な瞳。
彼女と同じだ、全てが。
従姉妹なんだから当たり前だよね。


「危ないよひかりちゃん!」

「大丈夫ですよ沢田くん。忍の私には簡単なことですから」

「でも…!」


なおも心配したような瞳で見てくる沢田くん。
そんな瞳を見るとね、私には嘘に思えてしまうの。
それは本当に貴方が思っているの?
私のこと心配してるの?
もしかしてそうやって前みたいに油断させて私のこと殴りたいんじゃないのかな。
私にはなにが本当でなにが嘘なのかわからないの。
でもね、きっと簡単なことだって気がついたよ私は。

初めから人間なんて信じなきゃいいんだ。


「じゃあ私行きますね」

「え、ひかりちゃん」

「バイバイ沢田くん」


軽く跳んでフェンスから下りれば目を見開いた沢田くんと目があう。
そんな瞳から逃げるように、触られないように私は逃げる。
パタンと閉めたドアが少しだけ淋しかった。




(独りの方が楽なんだよ)






20100922
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