何時の間にか君は僕よりも奈落に落ちていた。
僕には信じれる者たちが側にいる。
けど、君は信じれる者たちが出来て、それを失った。
その差は歴然としていて、君を変えてしまうには十分だったのかもしれない。
あぁ、そう考えれば僕たちは、いえ僕はなんてことをしてしまったんですか。
本当に愛する者を傷つけた僕は、きっと滑稽で、僕の嫌うマフィアから見ても情けなく嘲笑されるに値する人物なんでしょうね。


「また、貴方ですか」

「ひかり…」

「いい加減つきまとうのはやめてもらえませんか?」


僕を氷のような瞳で睨みながら発せられた言葉に柄にもなく心臓が痛んだ。
ひかりに会いに来るのはもう何回来たか忘れてしまうほどに来ている。
だが、その度に彼女の反応は一切変わらず、僕の心臓を痛ませた。
しかし、そんなことを僕が思っていいわけではないのに、クロームの身体をわざわざ使って来ていいものかと考えるのもいつものこと。
出してはいけないため息が出そうになった。


「用がないのに一体なにをしにくるんですか?」

「それは…」


全くと言っていいほど言葉がでないものですね。
自分でも人を傷つける言葉なら簡単に吐けるものなのに、こと人に想いを伝える時には何も言えない。
不気味なくらい黙ってしまい、自分に笑いさえおきますね。
ああ、こんな切ない気持ちを君はいつもしていたと思うと心が痛い。


「ひかり、僕は…」

「謝罪なんて要りません。いい加減馬鹿の一つ覚えみたいに言わないでくれませんか?」

「っ!」

「ああ、無理でしたね。君たちは無能な忍。生きていることが罪。それを理解しないなんて、なんて気楽な人生何ですか?でしたか?貴方が私に言った台詞は?」

「ひかり!」

「何も聞きたくありません。貴方達の言葉なんて、私だって信用してません」


そうか、彼女の瞳や動作を見てわかりました。
きっともう全てが手遅れで、彼女には何も響かない。
そのいい例が、僕に見向きもせず帰って行く今の状態が全てを物語っています。

どうしたら、彼女に言葉が、想いが伝わるのか。
僕は知っていたはずです。
絶望した者がどんな道を辿るのか。
また、だからこそ仲間がいるということがどれだけ心強いのかを知っていたのに、僕は全てを壊してしまった。
ひかりはきっと闇が他よりも深い。
元より忍としても優秀な彼女はきっと回復を望まない。


「クフフ、本当に僕を殴り飛ばしたいですね」


でも、明るい未来を想像してしまうのはきっとまだ、彼女に対する恋心が消えてないからですかね。
ずっと好きだって伝えたら、君は笑ってくれますか、ひかり?







(君の笑顔がただ見たいんです)





2019.6.21
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