毎朝会う彼。
名前はよくお父さんが言っていて知ってる。
爽やかに笑う顔も、朝練に遅刻しそうで苦笑いする顔も。
気がつくと自然に視線で追ってたの。
彼を見てるとドキドキして自分が自分じゃなくなっちゃう。
コレ、病気なのかな?
彼物語
(わからない気持ち)
毎朝通る道には私の楽しみが詰まってるの。
今まで気にしなかった道も、どんなに嫌な授業がある学校も、風邪をひいていても、彼に会えると思うと行けた。
この時間で合ってるよね?なんて気にしながら何度も携帯に表示される時計を見る。
そうすれば、曲がり角から表れた長身の黒髪の彼。
持っているバックや道具を見ると野球部のよう。
彼に合うな、って思う私はやっぱりおかしい。
「(ドキドキする)」
彼が近づくだけで心臓がバクバクして、足が棒のように重くなって、目の前がグラグラする。
あぁやっぱり私は病気なんだと思い彼の横を過ぎる。
なんだかこの瞬間が切ないの。
彼が呼び止めてくれるわけでもないのに。
それは夢見すぎなこと。
「なぁ」
「えっ、はっ!!(んなぁーーー!!)」
ポンと自然に置かれた彼の手。
私はそんなこと気にする余裕もなくて、内心パニックパニックの嵐。
なんで私に話しかけてくれてるの?なんてことはどうでもよくて、私の身だしなみどこか変なのかな?や私やっぱり毎朝あって嫌な気分にさせちゃったのかな?なんてことばかり思っちゃう。
「あのっ、えっと」
「コレ、落としたぜ」
「は、ハンカチ?」
出されたものは以外にもハンカチ、いやベタなのかな?
何度もポケットをあさってもハンカチの感覚はなくて、もしかして携帯入れたときに落としちゃったんだ。
なんて思うと急に恥ずかしくなっちゃって、目の前で笑ってる彼を見ると余計になる。
「あのっ、ありがとうございます!」
「いいって!それより朝いつも会うよなー。もしかしてこの近くの学校?」
「あっ、はいっ!緑中です!」
「へぇー頭いいんのなっ!」
「そ、そんなことないですっ!」
オレよりは頭いいのな!って言う彼はやっぱりかっこよくて、なんだか私の世界がより一層輝いた。
この笑顔にドキドキされちゃうの。
なんだろ、コレってどっかの物語なの?
もう、私が一番分からないや!!
「あ、何年なんだ?」
「えっと、二年生です!」
「おっ!同い年だからさ敬語いらないぜ!なっ?」
「(うそ!)あっ、はい、じゃなくてうん」
「そーそー」
そうやってきれいに笑う彼。
なんだろ、さっきからきれいに笑うやかっこよく笑うってそればっかりだ!
でも本当なんだからしかたない!
「これからも毎日会うんだからたまには話したいよな!」
「うん、そうだね」
「じゃあメアド交換しよーぜ」
「い、いいの!?」
「あぁ、しよーぜ」
ずっと高なってばかりの胸。
今日はやけに多いなって感じる。
でも、この気持ちなんだろ。
わからないけど目の前にいる彼、山本 武君を見てると私じゃないってことは確か。
うーん。いつか分かるよね。
鈍感少女の恋
(今度野球の試合あるから来てほしいのな)
(うん!ぜ、絶対に行く!)
(約束な!)
((か、カッコイい!!))
.