私の大好きな彼は、それはそれは大変泣き虫な彼だったの。
いつも私の後ろにチョコチョコと着いてきて絶対に離れないような彼だった。

そんな年下の彼は変わってしまった。
けど、変わらないものもあったんだ。




(今も昔も)



今日も高校の授業が終わりいつものように帰路についていた私。
普段と違うことはその時間帯。
たいてい私が家に帰るのは18時近くで、15時近くに帰るのは本当に珍しいこと。

なんだか早く帰ったら帰ったでやることなさそうだなぁ。


「あっ…懐かしー」


キィ、キィと音がしてそちら側を向けばその音の招待はブランコ。
そして、その近くにあるすべり台を見ると自然と懐かしむ気持ちがフワッと風のように吹き荒れた。
昔はよく遊んだなー。二つ下のあの子ともよく一緒にいたし。
まあ、私の受験や学年の違いで今じゃあんまり話すことも遊ぶこともないんだけどね。
それに、あの子の周りは明るくなってる。
この前あの子を見たとき銀髪の男の子や黒髪の男の子といた所を見たし、なによりその二人と結構仲よさ気だったから友達よね。
彼も私ももう違う道を歩んでるのね。


「よっし!」


意気込み、急いですべり台に向かうとカンカンと音を起ててすべり台を上がってく。
少しフワリと暖かい風が吹いて、1番上に上がったとき立ち止まってしまった。
こんなに、違うんだ。
成長する前の自分とでは景色が全く違っていて、なんだか新しい発見をしたみたい。
当たり前なのに、当たり前なのになんだか切ない。


「あれ?千代姉さん?」

「!! 綱吉くんっ!」

「千代姉さん久しぶり!」

「うん。久々だねー」


声をかけられて誰かな?なんて思いながら目を向ければ、昔は泣き虫だった綱吉くんがいた。
変わらないフワフワとした髪に優しげな瞳。
なのに、遠くに見えるんだ。
チョコチョコと近寄ってくる姿はそっくりなんだけどね。
うん。やっぱり彼が大好き。(あっ、恋愛感情じゃないよ)


「千代姉さんどうしたの?すべり台の上で」

「んー?たまにはって思ってね」

「へー。オレも乗ってみようかな?」

「来なよ!私降りるからさ!!」

「えっ、あっ!降りちゃったんだ…」


スイーと下に降りればフワリとスカートが舞ったような気がした。
それに気がついて慌て綱吉くんを見れば、私の視線に気がついたのか顔を真っ赤にして「み、見てないよ!」って否定されちゃった。
まぁ、綱吉くんなら弟みたいな存在だからいいんだけど。

ジトーッとみる視線が不快だったのか綱吉くんは急いですべり台に上がるし、やっぱり綱吉くんってからかいやすい…。


「うわぁー、全然景色が違う…」

「あっ!綱吉くんも思った?私もそうなんだ!!」

「い、一緒のこと思ってたんだ(う、嬉しい!!)」

「ふふ、綱吉くんおっきくなったんだね!」

「…………」

「綱吉くん?」


クスクスと笑っていれば急に綱吉くんは黙ってしまって、あれ?どうしたのかな?
なんだか、怒ってる?
そんなことないよね?

でも話してくれないし、な、なんだか綱吉くんおかしいよ…!


「ねぇ、千代姉さん…オレって…」

「?」

「やっぱりオレって弟みたいな存在?」


初めて見る綱吉くんの真剣な顔。
今まで見てきた心が暖かくなるような大空の笑顔とかじゃなくて、立派な男の子の顔。
そんな綱吉くんの顔を見てなんだかドキドキする。
私の知らない綱吉くん。
けど、それでも彼は彼なんだ。
きっとそんなこと思うのはさっきまでの笑顔のせいだよね。


「千代姉さん…!いっで!、あでっ!!ふぎゃっ!!」

「綱吉くん!?大丈夫!?」


さっきまでの真剣な顔つきはどうしたのか、すべり台から下りようとして足を滑って漫画みたいに転がり落ちるなんてそんなベタなこと綱吉くんしか出来ないよ。
確か昔もそんな風に転がり落ちて私に泣きついたんだよねー。
慌て綱吉くんに近づけば鼻を押さえて照れたように笑う。
あっ、なんか母性本能がくすぐられる。


「あははっ…!やっぱりオレってダメツナのまんまだよね…」

「そんなことないよ綱吉くん」

「いや、大丈夫だよ千代姉さん。オレ慣れてるから」

「私はそんな昔から変わらない綱吉くん、大好きだよ!!」

「!!!」


そうやって一生懸命伝えれば綱吉くんは急に真っ赤になっちゃって。
あれ?風邪かな?

私が本当の綱吉くんの気持ちに気がつくのは三ヶ月後のことでした。




(やっぱり千代姉さん…)
(どーしたの綱吉くん?)
(なんでもないよっ!)
(ふふっ変な綱吉くん)





20091111
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -