遠くから小十郎様が「政宗様ー!政宗様ー!」という声が聞こえる。
きっとまた大量に溜めてしまった政務から逃げるようにして部屋を後にする政宗様の姿が思い浮かんでしまい、そっと苦笑してしまう。

私が政宗様のところに嫁いで一月。
なんて早いのでしょうか。
そう思いつつもやはり一月で大分政宗様の行動が分かってきました。
この日の光の感じでは小十郎様がお使いになっているお部屋の縁側に。
曇りは空全体が見えるよう木の下に。
雨が降られたときには傘をさして、裏庭に。
たった一月ではありましたが、この一月で政宗様の行動は既に把握済み。
ですから、会いに行きたくて身体が動いてしまうんです。


*********


部屋からでて小十郎様のお部屋を目指して歩いてゆけば、そこには案の定政宗様がいらっしゃいました。
何をするでもなく、ゆっくりと空を見上げる彼を見て自然と私の心が躍る。
風が吹き彼の優しい髪が揺れる。
茶色の大好きな髪が、ゆっくりとふわふわと揺れる。
やはり貴方様は綺麗で、素敵で、私には大変輝き過ぎている方なんです。
ああ、政宗様…。


「政宗様」

「ん?よ、千代。come on、こっちにきな」

「はい」


私の存在に気がついたのか、ゆっくりと私の方を向き優しい眼差しでこちらを見てくださる政宗様。
そんな視線に胸が大きく弾んでしまう。
ゆっくりと歩み寄れば普段の数倍、いえ…いつも素敵なのですが、今日は数倍素敵に見えてしまうのです。
私には政宗様が本当に素敵過ぎて…、お側に寄るのでさえなんだか一大催し事みたいなものです。
ふふ、変な感じですね。


「ここの風は心地好いな」

「ええ、大変暖かな優しい風です」

「Good!わかってんじゃねぇか千代」

「政宗様の妻でございますから」

「Ha!違いねぇ。あんたは最高の女だ」


そう言ってこちらを向いた政宗様の顔は優しく、なによりも愛おしいものを見るかのような感じで私を見ていた。
あまりの優しい表情に体中の血が沸騰してしまうのではないかというくらいに心の臓はもう駄目になってしまう。
縁側に座っていた私は思わず下へと視線を向けてしまって…ああ、なんて無礼な態度なのでしょうか。
それでも…やはり貴方様が愛おしくて、盗み見るようにして見ればこちらを見る政宗様と視線がばっちりと合ってしまった。
普段の悪戯するようなお顔ではなく、優しい笑顔…。


「政宗様…」

「俺は将来ってか…ずっと側室をとるつもりはない」

「−−え」


突拍子のないそのお言葉に私自身の体が固まってしまった。
そのお言葉をその通り受け止めてしまうと大変嬉しいことで…!


「俺は千代一人と決めた」

「ですが…子々孫々までの繁栄を望むならば…」

「No!確かにそれも大事だが、…千代との歩む未来も大事だろ」

「あ…」

「ここ一月でちゃんとわかった。ただ甘い雰囲気でいるのがいいわけじゃねぇって。何気ない会話や、こんな風に千代と陽に当たったりなんてしてる日常がいいってな」

「ですが…」

「細かいことは気にしなくていいんだよ。結局、あんたはどうなんだよ?どうしたいだ千代」


「私は…」なんて言葉を発するのですが、本当ならばもう答えは決まっています。
だって、この一月で貴方様のいろいろなところを知ってきました。
悪戯には嫌なときもありましたが、それでも大切という気持ちがいつもありました。
それは…貴方様が、政宗様が好きであるが故に。
もう、初めから答えなど決まっていたもの。
気持ちを偽る必要などなかったんですね。


「私も政宗様と同じ道を歩みたいです」

「OK!ついてきな千代!勿論後ろじゃなくて横だ。you see?」

「はい!」


将来が不確かでも貴方様と歩む未来ならば本当に素敵なものであると思うのです。
だって、政宗様ですもの!




(政宗様見つけましたぞ!)(うげ…)(政務をなさってください!…奥方様まで何をなさっているんですか!?)(おい小十郎、千代に小言は無しだ!coolに行こうぜ?)(政宗様、…ありがとうございます)(これくらい夫の勤めだろ?)(政宗様…)(千代…)(はぁ…)






相互ありがとうございます!
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20110203
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