「なにしてるのディーノ?」


心地好い天気でさっきまで昼寝をしていた私。
さすがに仕事をサボるわけにもいかないので応接室に戻ってくれば、ふわりふわりと揺れる金髪の彼−−彼氏のディーノがいた。
滅多に会えない彼がいることにも驚いたが(マフィアのボスなんていったら当たり前だよね)なによりもその不審な行動に自然と眉が寄る。
ディーノの顔を見ればどこか慌てた様子で私を見ているし、なにを隠してるのかな彼は?
気になることは常に追求したい私だから当然彼の行動は気になる。
知りたいという要求がむくむくと膨れ上がる。


「よ、よう千代!」

「ああ、こんにちはディーノ。それより今なにを隠したの?」

「なんにも隠してねーよ!!な、なぁ?」

「……」


ディーノってやっぱり部下がいないと阿呆だよね。
必死に弁解しているものの声は上擦っていて、冷や汗かいて、手は動揺でプルプル震えている。
それじゃあ何か隠してます自分は、て言っているようなものだった。
まあ、それが可愛いし(本人に言うと怒るから言わないけど)なんていうか、母性本能を擽るんだけど…無自覚なんだよね、ソレ。可愛いのは可愛いけどやっぱり隠し事をされるとイラッとくるし、ムカつきもしてしまう。
ましてやそれが恋人からなんて考えるとよけいにだよ。


「そう…」

「(ほっ)」

「−−なんて言うと思ったの?」

「なっ!千代っ!!」


油断をさせといて彼の腕を思いっ切り掴む。
その腕を前に出せば絆創膏が大量に貼られた腕が見える。
え、と思いつつよく手の平の中にあるものを覗けば…これってぬいぐるみ?
ぬいぐるみにしては小さいし…あ、キーホルダーか。
でもすごくいびつな形をしすぎじゃない?
目のバランスは悪いし、糸が少しほつれてる。
一体なんでそんなものをディーノが持ってるのかわからない。
そんな疑問をぶつけるかのように彼を見ると顔を真っ赤にして固まってた。
大人なのに可愛いなんて卑怯じゃない…!


「何これ?」

「えっと…!そのだな…」

「ねずみ、のキーホルダー…?」

「んなっ!ハリネズミだっつーの!!」

「へぇ…で一体なんでそんな不格好なやつ君が持っているの?」

「…そんなはっきり言うなよ」

「事実を有りのまま言ったまでだよ」

「(容赦ねーーっ!!)」


どうして持ってるの?なんてまた催促をすれば今度は酷く落ち込んだディーノが視界に入る。
…なんか犬の耳が見える。
なんで彼はこんなに落ち込んでしまったのかな、と思いながら考えていれば、ふと先週の電話での会話が浮かんだ。

そういえばあの日確か、私が携帯電話に付けるストラップについて言っていたような気がする。
そんな話をしていたらディーノがどんなの?みたいなことを言ったから…ああ、手作りのアニマルボックスのストラップって言ったんだ。

そういうこと。
大方作ったはいいけどあまりにも不格好過ぎて渡すに渡せなかったってとこね。
まったく、どこまでも可愛い人。


「それ私が貰ってあげる」

「−−え、」

「そんな不格好なの私ぐらいしか貰う人ないわ」

「けどよ、千代にはもっといいのが…」

「それが最もいいストラップだよ。−−誰かさんが必死に作ったストラップが、ね」

「〜〜っ!!千代〜!」


犬みたいに尻尾を振って抱き着いてくる彼を受け止めながら思ってしまう。

相当、私は彼が好きらしい。

ぽんぽんとあやす様に彼の背中を叩きながら笑ってしまう。
最初の印象なんて『ムカつく金髪』くらいにしか思ってなかったのに、まさか恋人まで関係が発展してしまうとも思わなかった。
ディーノの香水の匂いがより私をくらくらさせてしまう。
ふと肩に止まるディーノの手を見て、なんでこんなに必死になって彼は尽くしてくれるのかな?なんて柄にもなく思っちゃった。
−−始まりなんて些細な言葉なのに。
でも、それがどうしようもなく愛しくて、本当に愛しくてしかたがない。

お互いゆっくり体を離しながら私はディーノの手を掴んだままでいた。
彼はそれを不思議がりながら見ていたけど構わずその手にキスをする。


「なななっ!千代っ!!??」

「貴方って本当に可愛い」

「男に可愛いは無しだって言ってるだろ!」

「ふふ、それでもってカッコイイ」

「…千代?」

「私、そんなディーノが好き。大好き。どうしようもないくらいディーノに夢中なんだ」


いつも思っていたことを口にすれば心からなにかが満たされる。
今日は普段より優しい顔で笑えているような気がする、なんて考えていれば頬からリップノイズが聞こえた。
ぱちぱちと何回も瞬きをすればそれがディーノだとわかる。
−−優しく微笑む彼は、キラキラと金髪が揺れて王子様みたいだった。


「オレもすっごい千代が好き、大好きだぜ。むしろ世界で1番愛してる」

「…っ」

「なぁ千代。これからも一緒に道を歩んでくれるか?」

「私以外に君みたいなへなちょこサポートできる人がいるの?」

「いねーよ。−−千代にしか無理だ」

「知ってる。しょうがないから一緒に歩いてあげる」

「ああ、ありがとう」


木漏れ日が暖かい午後。
私は誰よりも大好きな彼と将来を誓った−−。




(次は私がストラップ作るね)
(へ?)
(そしたら携帯電話につけなよ)
(ああ…!)







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20100925
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