大嫌いだったこの世界を塗り替えてくれた貴方。
普段からは連想もつかないほどにかっこよくて、素敵でした。
ありがとうじゃ伝えてれないくらい言いたいの。

本当に感謝しています。
ありがとう、佐助様。




(大好きな貴方へ)



今日も今日とて彼らは謝るのでしょうか?
それが、それが私にとって辛いこととは思わないのですか?
私は…それを掘り返していただきたくは無いのです。
なぜ、分かってはくれないのですか?


「千代殿!!」
「Hey!千代!!」

「はい、なんでございましょう?」

「その、でござるな…」

「Ah〜あのな」

「謝罪ならばもうよろしいですよ。私にも非がございます。ですからよろしいのです」
「しかし…!」

「では仕事がありますので失礼いたします」


後ろを見ずに歩いていく。
寂しさも苦しみもなにも感じはしない。
ただある感情は憎しみと人に対する嫌悪感。
人なんて信じても無駄。
私が信じるのは私だけなんだ。


「やっほー千代ちゃん!」

「! っ、猿飛様…」

「どうしたの千代ちゃん?寂しい顔して」

「っ、!知ってるくせにそんなこと言わないでください猿飛様」

「猿飛様じゃなくて前みたいに佐助様ーでいいよ」

「人の話しを聞いてください!!」


怒りに任せて発した言葉の続きを言おうとしたらドンッと音がして背中に鋭い痛みが走る。
肩には男の人の手があって…猿飛様が?
そんな含みの篭った瞳で猿飛様を見上げれば、酷く悲しんでいる瞳とぶつかってしまった。
この人も裏切り者なのに、大嫌いな最低な人達の一人なのに、なんで私こんなにも苦しくて、心配してしまうの?
変な感情が表れてしまう。
あの時は誰も信じてくれなかったのに、そんな裏切られる気持ちさえ理解してもらえないのに、なんで、なんでその気持ちに勝るそんなこと思っちゃうの?
私は裏切られて、彼らは裏切った。
それは変わらないのに…!


「千代ちゃんはなんで俺を避けるの…?」

「そんなの、わかってるじゃないですか…」

「わかってる!けど…俺様は…!」

「…味方になってくれました!!!けど貴方様は攻撃したじゃないですか!!??」

「それは…旦那の命令だったから…!」

「命令じゃなくてもしたんじゃないんですか…?」

「!」

「あの方は姫でした。だから女中の私は信じてもらえないんです。わかってました、けど苦しかった、死にたかった…!」

「千代ちゃん…」

「そんな気持ちなんにもわかんないくせに…!!」


なんでこんなにも涙が溢れてしまうんだろうか?
それに私、猿飛様にこんな言葉を使ってしまって、でも構わない。
この気持ちに終止を打つにはいいんでしょうか?
気がついてしまった。
敵わない恋だとはわかっているのに、私は知ってしまった。
だからさよなら。


「俺、ね…旦那の命令で攻撃したとき…忍なのに柄にもなく苦しかったんだ」

「猿飛様…?」

「忍なのにね、俺は恋を知ってしまった。最低だよね、好きな人傷つけたんだから」

「っ、猿飛様…!」

「千代ちゃんが俺を嫌いでも構わない。千代ちゃんは俺があんなことしたから嫌いになってると思う。けど俺は好きなんだ」


切実に言う猿飛様のお顔なんて私は見れない。
たくさんたくさん傷つけて、傷つけられて、でもこの恋い慕う気持ちは消えなかった。
そう思ってしまうと辛いし、苦しい。
言ってほしかったと思うのに、言ってもほしくなかった。
矛盾が矛盾を呼んで心がおかしくなりそう。


「猿飛様、私は…貴方をお慕いしておりました」

「えっ、千代ちゃん?」

「本当に貴方様が好きでした。けど今の私には理解ができないのです」

「そっか…」

「申し訳ございません。私は…」

「じゃあ俺様頑張るよ」

「え?」

「嫌われてないってわかったし、俺様は千代ちゃんが好きだから、ね?」

「え、あのその…」

「じゃあ覚悟してよね千代ちゃん!俺様本気だよー」


それだけ言ってぼふんと消えてしまった猿飛様。
心が躍る。
歓喜の感情が出てきてしまいそうで怖いな。
私、嫌われてから性格かわっちゃったかな?でも、それでも私は…。





(今は言えないんです)
(けど、)
(佐助様を信じたいです)






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