「リボーン!!」
「安心しろ蒼空。オレがお前に纏わり付くストーカーを退治してやるぞ」
「(すっごい勘違いです!!??)」
その可愛らしいベビーフェイスに似合わない青筋をたてながら真っすぐに正一を睨みつける。
また、言っている台詞はなんと物騒なことか。
さっきまではカップルと思っていたが、それも脳内ですぐさまストーカーへと変換する。
簡単に言えばカップルだったとしたら心底腹が立つからである。
だが、一連の言動を見ていた蒼空はひくりと顔が引き攣り、何度もリボーンの顔を見てしまう。
だいたいこういった言動をしたときのリボーンはろくなことをしない。
それは悲しいことに経験上よくわかっている。
嫌な予感がする、と思い正一の方を見たらその予感は−−当たった。
ドカァアァアア!!!!
「ぐはっ!!!??」
「蒼空から離れろストーカー野郎」
「ナイスです!!リボーンさん!!!」
「へっ、わっ!!??正くん!!!??」
「正くん…?」
蒼空の視界にいた正一は一瞬のうちに消え去った。
実際は消え去ったというわけではなく、吹っ飛ばされたが正しい。
誰にとは言わなくてもわかるように最強最凶の家庭教師リボーンにだ。
その強烈な赤ちゃんらしくないキックは正一の鳩尾を正確に捕らえていた。
数メートル飛ばされた正一はさすがにその痛み故にうずくまってしまう。
彼自身、身体をとことん鍛え抜くアスリートのような者ではない。
むしろ文化系にいるような人物だ。
故にそんな強烈な打撃に堪えれるはずがない。
それを知っている蒼空からすればそれは顔面蒼白ものだ。
吹っ飛ばされた彼に慌てて駆け寄る。(その行動にリボーンと獄寺がイラッとしたのは言うまでもない)
「ちっ!あの野郎あそこまで10代目を…!!」
「正くん…正くん…」
「おい!野球馬鹿!てめぇさっきからなにぶつぶつ言ってんだ!!??」
「留めさすぞ獄寺」
「あ!はいっ!!リボーンさん!!」
「あ…」
「あ?んだよ野球ば…−−」
「ああああああっ!!!??」
周りにいた人さえ振り返るような大声で正一を指差す山本。
さすがに山本らしくない行動に近くにいた獄寺もリボーンも驚いた。
しかし、今の山本には関係ない。
ずっと頭の中でナニカが引っ掛かっていた。
モヤモヤとしたものが頭にあって、それが何だかは検討が全くつかずにいた。
だが、ようやく蒼空の言葉をきっかけに思い出す。
そう−−思い出さなければよかったと思うほどの重要なことを。
さっきまで苦笑していた顔も今では蒼空と同じように顔面蒼白だ。
その様子は近くにいた獄寺やリボーンにもわかり、不思議な顔をしてじっと山本を見る。
一体何事だと言わんばかりに食い入る。
「あ?一体どうしたんだよ?」
「獄寺、小僧…謝ったほうがいいぜ」
「なんでだ山本?あいつは蒼空に纏わり付くストーカーだぞ」
「違うんだ小僧…。あいつは、あいつは…」
「あいつは…って早く言いやがれ野球馬鹿!!」
「蒼空の幼なじみなんだよ…」
その台詞はさっきまで怒りを感じていた獄寺とリボーンの動きを止めるには十分な台詞であった。
もしも山本の話が正しいならば今まで彼らがしてきた行動はアウトである。
デートと思っていたことが、ただ遊びに行っていただけならば。
彼氏だと思っていた人物が幼なじみだったならば。
イチャイチャしているように見えたのが、ただ気さくに話せる相手だったからそう見えてしまっただけならば。
自分たちはとんでもないことをしてしまった。
勝手に尾行をして勝手に怒って、しまいには暴力に手をだす。
そんなこといくら蒼空が穏和な性格といえども許されない。
現に固まった彼らがゆっくりと振り返れば…−−。
「3人とも正くんに何するんですか…!!」
その瞳に溢れんばかりの涙を溜めてこちらを精一杯睨みつける蒼空がいた。
普段ならば苦笑して終わる蒼空も今回ばかりは違う。
山本の言う通り正一が大切な幼なじみだからこそ怒っているのが目に見える。
「いや、これにはですね10代目…」
獄寺がなんらかの言い訳をしようと口を開くが…それも一瞬で閉じる。
普段からは想像もつかないほど怒っている蒼空がいるため言葉が続かないのだ。
いつも怒らない人物だからこそその恐怖は計り知れない。
今回の尾行並びに妨害は完全に獄寺たちの負けであった。