「ご、ごめんね!奢ってもらって…!」

「気にしなくていいよ。僕が奢りたくて奢ったんだから」

「う、うん。ありがとう!」

「どういたしまして」


クレープを持ちながら謝罪する蒼空を見て思わず正一は苦笑してしまう。
彼女の性格からして気にしてしまうのは分かっていたことだが、改めてそんな姿を見ると変わらないな、と感じた。

昔からいつも彼女はそうだった。
気にしなくていいというのに細かいことや小さいことを気にしていつも謝罪をする。
それは気を回しているととれるが、行為をした者からすると酷く悲しいことだ。
何回もそのようにされれば、した行為が有難迷惑だと言われているようになる。
故に彼女の性格からきているものとしても悲しく感じでしまう。
−−僕たちは幼なじみなのにな、と思うのは日常茶飯事。


「あ、このあと本屋に行かないかい?」

「え!いいの?」

「うん。蒼空が行きたいってずっと言ってただろ?」

「覚えてくれてたんだ!!」

「もちろん。じゃあ食べたら行こう」

「うん!」


元気に返事をした蒼空は持っていたイチゴクレープをパクリと食べた。
いつもより早いペースでクレープを食べようとする蒼空を見て正一は胸のうちがポカポカなるのがわかる。
きっとこんなにも早いペースで食べようとするのは、大好きな本屋に行けるからで、もしかしたら覚えていた正一に感謝しているからなのかもしれない。
正一としては下の理由の方が嬉しいが、きっと蒼空はその両方が理由だ。
そう考えると喜んでいいのか、悲しんでいいのかわからない。
しかし、好きな子の笑顔を見るのは男にとって至福といえることだ。
故に、苦笑しながらも蒼空と一緒に本屋に向かうのだった。


*********


「いっぱい買ったね蒼空」

「うん!だってこんなにも好きな本があるんだもん!思わずいっぱい買っちゃった!!」

「それだけ買っても古本だから安かったし、経済的にもお得だね」

「本当にそうだね!すっごく嬉しい!」


7冊の本を大事に抱え込み嬉しそうに笑う蒼空。
まさしく満面の笑みである。
その手に持つ本はミステリーから恋愛などと幅広い本であり、興味のある本を至るところから持ってきたという感じになっている。
それはいつもの蒼空がする買い方であり、気にもしない正一。
付き合いが長いぶん彼女のことをよく理解している。


「蒼空はどっか行きたいとこある?」

「うーん、特にはないかな」

「じゃあその荷物持つよ。歩くなら重いだろ?」

「え、でも…」

「いいから。僕だって男だから平気だよ」

「ありがとう」


ほんのりと頬を染め、少し背の高い正一を見上げる。
また、そんな蒼空から本を受け取り正一も嬉しそうに笑う。
カップルのように微笑みあっているが、彼らは何度も言うが幼なじみである。
普段からこのような会話をするためにカップルに間違われてしまうのだ。
天然が揃うとやはりそこが怖い。
だが、そんな漫画のワンシーンのような微笑ましさは行動や雰囲気から周りに伝わってしまう。
なによりも子供らしいカップル(実際は幼なじみだ)の会話に周りは優しい目でずっと見てしまう。
しかし、誰もが笑っていた空間に堪えれなくなった人物たちがいた。
それは…−−。


「ってめぇえぇっ!!!10代目をたぶらかしてんじゃねぇ!!!」

「頭に銃弾がいくぞ」

「ははっ!よっ!蒼空」


後ろからストーカーの如く着いてきていた彼らだ。(一部普通に挨拶をしていたが気にしないでいただきたい)
当然いきなり現れた彼らに蒼空は瞳を大きく見開いた。


「獄寺君、リボーン、山本君!!??」

「蒼空の友達かい?」

「う、うん」


突如現れた獄寺たちに蒼空は驚いたが、それでも今日は休日だと思い出す。
そう考えれば彼らが急に現れても不思議ではない。
なにより今正一に言った通り彼らは友達だ。
たまたま休日に会った友人に話し掛けるのはなにも可笑しくはない。
そう脳内で完結させれば違和感はなにもなくなるのだった。

だが、蒼空は何も知らない。

獄寺たちは蒼空がそこにいる正一と付き合っていると思っていることを。
そして、その正一は蒼空をたぶらかし、もて遊んでいると考えていることも何一つ知らないのであった。
だから…−−。


「てめぇみたいな軟弱男が純粋無垢で美しい10代目をたぶらかすんじゃねぇ!!!」

「「え、」」

「蒼空に手をだす奴はこの家庭教師のオレが許さないぞ」


こんなにも今からお前をフルボッコにしてやるぞ、と顔に書かれたリボーンたちがいるとは気がつかなかったのである。
物騒なそれに超直感故になのか、いい予感はしないと蒼空は思った。



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