「正くんごめんね、待たせちゃって」

「大丈夫だよ蒼空。そんなに待ってないから」

「えへへ、ありがとう」


カップルのような会話をしている正一と蒼空だが、彼らは幼なじみである。
たとえ、待ち合わせに少し遅れた彼女に寛大な心をもって許すような彼氏のような会話をしていても彼らは幼なじみだ。
くどいようだが幼なじみである。
傍から見たらカップルに見えるが、それは見ないことにしよう。


「じゃあ行こう」

「うん!」


お互いがどちらともなく顔を見合わせて歩いていく。
その姿は少し初々しかった。

入江 正一は有名私立中学に通う中学1年の男子生徒だ。
小学校は蒼空と同じ並盛小学校に通っていた。
だが、あまり蒼空とクラスは同じにならなかったために、蒼空と話している姿はほとんどない。
故に中学を離れてしまった二人の接点は皆無に近い。
ならばなぜ、彼らが幼なじみかというと…−−親同士の仲がいいために、昔からよく遊んでいた。
学校では話すことが少ないが、放課後によく遊んでいたという仲良しぶり。
幼なじみを公然として示すわけでもないために、周りは知らないのである。
故にリボーンが知らないのも納得がいく。


「学校には慣れたかい?」

「うん!正くんは?」

「僕も慣れたよ。ちょっと勉強は大変だけど…」

「そっか…病気にならないでね」

「うん。ありがとう」


他愛のない会話をしていれば商店街が見えてくる。
小学生までは公園やお互いの家にばっかり行っていたが、中学生ともなると少し大人びたのか商店街へと変わった。
第一、蒼空の家に正一を連れてったならば『マフィア』『ボス』などといった物騒な言葉が飛び交うだろう。
それはなんとしても蒼空には避けたいことである。
しかし、蒼空はそれだけだと考えているが現実は違う。
沢田家に正一を連れていったならば確実にリボーンの銃が火を噴くだろう。
もちろん、悪い意味でだ。
教え子に悪い虫が付くならば全力でそれを殺す、それがリボーンの家庭教師としてのポリシーだ。
故に正一は二度と呼吸をすることができなくなるだろう。
蒼空の勘違いであれ、こうして正一の命は助かっているのであった。


「蒼空、甘いもの好きかい?」

「うん、好きだよ」

「この前オープンしたっていうクレープ屋行こう。おごるよ」

「え、あ!でも正くんに悪いよ!!」

「いいから行こう、ね?」

「え、う…」

「はい、決定!早く行かないと混んじゃうよ」

「わ!まっ、待って!!」


幼なじみということだけあって、正一は蒼空の扱いを心得ていた。
口で言っても聞き入れないならば、行動で表すべし。
蒼空と行動するための必須条件だ。
気を使いすぎる彼女だからこそ、そうするのが大事だと知っている。

後ろから必死についてこようとする蒼空を見て、正一が笑ってしまったのは−−きっと幸せだからだろうと思った。



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