「蒼空ちゃん!もう出ないと間に合わなくなっちゃうわよ!」

「は、はいっ!!もう行きます!!」


奈々が言ったのと同時にバタバタと上から音がした。
娘の蒼空がこんなにも時間に追われているのは珍しいと言っても過言ではない。
時間に余裕をもって行動するのが彼女である。
だが、今日はどうしたのか。
慌ただしく行動をしている。
奈々は慣れているのか気にしていないが、一階にいたリボーンとビアンキ、ランボは驚くばかりである。


「お、お母さん!変じゃないですか?」

「大丈夫よ蒼空ちゃん。似合ってるわよ」

「よかった…、わわっ!時間が!」

「はい、昨日作ってたマフィン」

「ありがとうございます!いってきます!!」


慌ただしく降りてきた蒼空を見てリボーンらが目を丸くした。
普段の蒼空がする格好の何倍も可愛かった。
べつに普段の格好がダサいというわけではない。
彼女似合った格好であると言える。
しかし、今日の格好はいつも以上に似合った可愛い格好といいたいのだ。
白いワンピースに半袖のパーカー、髪は緩く巻かれていて、普段の何倍も可愛い。
それはもう、リボーンが固まってしまうほどにだ。
ビアンキも普段とはあまりに違う蒼空を見て驚いたものの、それでも『流石は私の可愛い妹』と思っていた。
ランボは歳が歳なためにいつもと違うくらいにしか思っていない。
…どうしたら将来あんな伊達男になるのか教えてほしい。

各々で色々考えることは違うが、蒼空が慌ただしくでていったのを見送ってようやく我に返った。


「ママン、蒼空の奴なんであんなにめかし込んでたんだ?」

「ふふ、昔から遊んでいた大切な子に会いに行くためよ」

「…そうか。オレはちょっと出かけてくるぞ」

「ええ。遅くなっちゃダメよリボーン君」

「分かってるぞ。ちゃお!」


足早にその場を離れながら考えた。
あんなにも楽しそうで、嬉しそうな蒼空を見ていらいらした、と。その原因を絶対に見つけだしてやるとも誓う。
まだまだ、この胸の中にある蟠りの本当の意味をリボーンは知らないでいた。
気づくのは一体いつになるのだろうか。
それは彼にしかわからないことであった。


*********


ひたすら蒼空は走っていた。
人より運動能力がないとわかってはいたが、それでも蒼空は走ることをやめない。
時間が迫っているということもあるのだが、早く彼に会いたくて仕方がないが主な理由だ。
半月ぐらいしか経っていないのに、彼女にはその時間が何十年にも思えた。

久々に会える。
久々に話せる。
久々に遊べる。
久々に…−−一緒の時間を過ごせる。

そう思うと走る速度が自然とあがる。
嬉しさが顔に表れていて、終始笑顔である。
十字路を曲がって見えた彼の背中に叫んだ。


「正くんっ!!」


ヘッドフォンを外して振り返った彼を見て、満面の笑みがでたのが彼女にはわかった。
男にしては少し華奢で、眼鏡をかけていて、少しボサッとしたオレンジに近い茶髪の彼。
リボーンすらその存在を知らない少年の名を−−入江 正一といった。

彼は蒼空の幼なじみである。



幼なじみな私たち
(色々な感情のハジマリ)




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