「ってめぇー!なにしやがった野球馬鹿ぁあぁあぁ!!??」

「お、落ち着いてください獄寺君!!」


現在進行形で怒鳴り散らす獄寺を見てクラスメイトはその恐怖に身を震わせていた。
もちろん、教師も蒼空もだ。
この中で唯一畏縮していないのは山本と黒川くらいである。

ことの発端は山本がクラスまで連れてきてくれた蒼空を見てからだ。
今日は一段と登校する時間が遅い蒼空を気にしてか、朝から獄寺は苛立っていた。
自分が迎えに行けなかったがために、なにかあったのではないかとずっと気にしていた。
そんな悶々とした気持ちの中、蒼空が山本と一緒に登校してきたのだ。
物凄い嫉妬をしたのと同時に、蒼空の顔を見て思わず血の気もひいてしまった。
怪我をしていたのだ。
その美しい顔に痛々しい傷をおっている。
むろんそれは獄寺から見てである。
彼から言わせれば京子などの美人は蒼空の目の前では霞む存在であるらしい。
−−故に彼がキレるのに時間はいらなかった。


「これはちょっと…転んだんです」

「ですが10代目…!その傷は…っ」

「まぁまぁ獄寺。先生!オレ沢田を連れて保健室行ってきます」

「あ、ああ…」

「いいか!10代目は出席にしとけよ!!あぁ!?」

「ひぃいぃい!!!」


蒼空の弁解を聞いても獄寺にはわかっていた。
その傷は自然に転んでできた傷などではなく、他人につけられたものだと。

彼はこれでもマフィアの端くれだ。
ましてや並盛に来てから不良にわけの分からない言い掛かりで喧嘩をしたことがある。
そんなとき、獄寺とて怪我をすることはある。
自身で治療すれば尚更傷を覚えている。
故に、直ぐにわかってしまうのだ。
その傷の違いに。

−−だが、それだからといって尊敬する彼女が否定したものを自分が否定するわけにもいかず、悶々と悩むしかなかった。
そして何よりも、庇われたのが山本であるのが腹立たしい。
それはこの上ないほどにだ。
半ば八つ当たりのように教師にあたったが、否、完璧な八つ当たりだが、それは彼の中ではしかたがないことである。
なぜならば、彼は年上が嫌いであり、10代目以外はどうでもいいのだから。
とりあえずは今は愛する10代目を保健室に運ばなければと自分を叱咤する。
ちなみに山本はおまけである。
山本から言わせれば獄寺がおまけなのだが、それは言わないでおこう。


*********


「失礼しまーす。先生ー?」

「いねぇじゃねーか。ささっ!10代目はコチラに座ってください」

「え、す、すいません」

「いえ!」

「氷嚢とシップあったぜ!とりあえず氷嚢で冷やしてからシップ貼っとこうな」

「あ、ありがとうございます山本君」


手当てをしながらよく彼女の傷を見れば、白い頬によく映える青紫色。
ギュッと心臓がわしづかみされる気持ちだった。
苦しくて、なによりも申し訳ない気持ちができてしまう。
本来ならば、女の子に…それも好きな女子に怪我をさせるわけにはいかなかったのだ。
なのに…とまた考えると胸が締め付けられる。


「蒼空…」

「山本君?」

「守れなくてごめん」

「え」

「野球馬鹿だけじゃありません。オレが側にいなかったばかりに…!本当にすいません!!」


酷く申し訳なさそうにいう獄寺と山本を見て、蒼空の方も胸が苦しくなる。
−−なんで私はいつもいつも、人に不幸を与えるの?
そんな疑問しか浮かんでこない。


「気にしないでください。全部私のせいなんですから」

「ですが…」

「お二人が気に留めるほどのことじゃないですから」


だから、笑ってください。
私なんかのために悲しそうな顔をしないで。



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