「っ、うっ…ひっく…」
「ご、ゴメンなのな蒼空」
「うわぁ、って…っ…!」
「な、泣き止んでもらえないか?」
「っ、っ、…む、無理…です、よっ…!」
そう言う蒼空の瞳からは留まることを知らない涙が何度も何度も流れていて、オレが蒼空を泣かせたんだと何度も自覚出来た。
やっぱり好きな女の子を泣かせる男って最低だよな。
こうなった原因は数十分前くらいの話。
簡単に言えば野球のスランプが原因。
オレはどうしても野球で活躍しなくちゃいけなかった。
理由は蒼空に見てもらいたいから。
近頃蒼空は転入生の獄寺って奴と一緒にいて(獄寺も蒼空だけに優しい)しかも一緒によく帰っている。
それになんだか獄寺と居る蒼空は楽しそうで、オレの勘違いかも知れねーけど。
好きな女の子が他の男子と居るだけでも焦るし、それに伴ってかオレは野球がうまくいってなかった。
そんなんじゃ蒼空にも見てもらえないだろうし、正直すげえ焦った。
だからオレは見てもらえるように必死に必死に練習をしたんだ。
けどそのせいで腕を骨折して、正直野球の神様に見捨てられたと思ったんだ。
そんな今じゃくだらないような理由でオレは屋上から飛び降りた。
けど最終的には蒼空が助けてくれて。
結局オレは大切な女の子を泣かせちまったんだ。
「蒼空…」
「っ!…ひっく…」
「…っ、ごめんなぁ」
「な、なんで…ですか…!」
「?」
「なんで、相談…してくれない…んですか!」
「!!」
「たいした、ことは言えないかも、ひっく…知れませんが、相談してください!」
「…蒼空」
蒼空が泣いていたのはもしかしてずっとそれが原因?
だったらすっげー幸せなのな。
泣かしているから不謹慎なのかもしれねーけど、それでもやっぱりオレを少しは特別に思ってくれている証拠だよな。
嬉しい。やっぱり愛しいって気持ちがあふれる。
蒼空、オレさもう馬鹿なことしねーよ。
「大丈夫。もうオレは自殺なんてしねーよ。それに蒼空のこと信じてるのな!」
「!!」
「オレ気がついたのな」
自殺しようとした中でオレの頭は冷静だった。
死ぬんだ。もう終わっちまうんだって。
もう少し野球だってゆっくりやれば野球の神様は微笑んでくれたんじゃないか?
もう少し獄寺に近づけば蒼空とどんな関係かってわかったんじゃねーか?
もう少し、ほんの少しの勇気があれば蒼空と違う道を歩めたんじゃないか?
自分自身を嘲笑うかのように後悔ばかりが溢れた。
そんな中で蒼空に手を掴まれて、その手がなによりも暖かかった。
一瞬だけ涙が溢れそうになった。
だから、わかったのな。
「死ぬ気にならなきゃなんにもわかんねーって」
「あっ」
「死ぬ時に後悔してそうわかった」
「っ、」
「だからもうオレは死なないのな。教えてくれてありがとうな蒼空」
「山、本君…!」
約束するぜ蒼空。
絶対にもう死んだりしないのな。
やっぱり蒼空に教えてもらったことは理解しねーとな。
改めてよろしく!
大空と約束!
(絶対に自殺はダメですよ!)
(大丈夫なのな蒼空)
(約束ですから)
(絶対に約束するのな!!)