目の前にいた佐助さんを見て驚いたのは当たり前。
けど、私はそれが何よりも嬉しかったの。
本当は気がついてほしくてさっき電話をした。
でも、いざとなったら何にも言葉がはっせなくて、助けても、怖いも、側にいたいも、何にも伝えれなかった。
そんな自分に悔しくて、ばかみたいって思えて、
それでもずっと助けてほしいって願っていたの。
だから、目の前にいる彼を見て歓喜のあまり泣きそうになる。


「陽榎ちゃん」


汗だくになり、私の名前を呟く佐助さんに私も思わず彼の名前を口にする。
だけど、私の頭に反響するのはお父さんの別れろという言葉。
嫌、いやいやいやいやっ!!!!!
私は、佐助さんの側にいたい。


「私、別れたくない…」

「え、」

「私は佐助さんが好き!絶対に別れたくないっ!!」


別れたくない、って言葉に驚愕のいろを見せるあなた。
話しの流れがわかっていないのだから当然なのに、私の口はなにも止まらない。
締まりのない口からはどんどん感情が溢れてくる。
好きなのに、なんにも相手に伝わらない。


「あなたの側にいたい。ずっとずっと!先まで一緒にいたい!!」

「陽榎ちゃん」

「初めてなの、こんなにも人を愛したの!両親になんて言われても側にいたい!あなたの一番がいいの!!!」


縋り付いてしまう私が彼は嫌かもしれない。
でも、もう私が言いたいことはわかってしまったと思う。
こんな私でごめんなさい。
それでも好き、大好き、愛してる。
誰よりもあなたが愛しい。
だから私の側にいてと願ってしまうの。


「陽榎ちゃん…」

「私、側にいちゃいけませんか…?」

「そんなことないよ陽榎ちゃん。でも」

「でも…?でも、なんですか!!??」


顔を反らした佐助さんを見て、私の心の中には闇が広がる。
佐助さんも別れたいって思ってるの?
大好きって気持ちが重いの?
そう考えると苦しくて、切なくて、気がつけば涙が止まらなかった。
ボロボロと落ちる涙はダムが決壊してしまったときに似ている。
頭を下げて佐助さんを見ないようにしていれば、ふわりとなにかが私を包む。
驚いて勢いよく顔を上げれば見えたのは優しい佐助さんの笑顔と薄い上着だった。


「落ち着いて陽榎ちゃん。俺様は陽榎ちゃんと別れるつもりは一切ないよ」

「え、」

「ただ、俺様は陽榎ちゃんの両親に認められる男になりたいだけだよ」

「っ!佐助、さ−−」

「お前!俺の娘になにしてるっ!!??」


私を安心させるかのように優しく笑う佐助さんを見て、私はまた嬉しさのあまり、泣きそうになってしまった。
だけど、私と佐助さんとの間に割り込んだ人を見て私は驚くしかなかった。
まさか、来てくれるとは思わなかったから。
あんなこと言ってしまった私を嫌いになってしまったんじゃないかって考えてたから。


「お父さん…!」

「へ、お父さん!!??」

「貴様、娘に不埒なことをしようとしてたな!!」

「ち、違います!勘違いです!俺は陽榎ちゃんを−−」

「陽榎ちゃんだと!!??」

「(逆効果ーっ!!??)」


紛れも無いお父さんの姿に私は何度も見返してしまう。
けど、何かを勘違いしているのかお父さんは佐助さんの胸倉を掴んで怒っている。
こんな姿を見たことがないために自然と体が固まる。
なにかしなきゃ、って思うのに私にはなにもできない。
どうしよう…!


「お、落ち着いてください!俺は、陽榎ちゃんの…!」

「俺の娘の名を気安く呼ぶなっ!」

「待ってお父さん!!!」

「陽榎?」

「この人は猿飛 佐助さん!私の彼氏だよ!!」

「こいつがだと!!??」


ありえない、そんな感情が篭っている目で見てくるお父さんを見ると私はいたたまれなくなる。
自然と胸の奥から裂けそうになる。
わかっている。
佐助さんの容姿など含め、お父さんが受け入れないと。

それでも好きなの。

この人以上に愛せる人が現れることなんてないと思う。
うんん。絶対にないよ。
佐助さんがすごく好きなんだから。


「お前には相応しくない!今すぐ別れなさい!!」

「いや!佐助さんとは別れない!」

「なんでいうことが聞けないんだ!!」

「だって好きなんだもん!!大好きなんだもん!!愛してるの!!!」

「陽榎っ…!」

「あの、すいません。お父さん」

「お前にお父さんなんて言われる筋合いはない!!」


何に対して怒っているのかはわからないけど、普段ではありえない感情的なその姿に疑問を感じてしまう。
そして、佐助さんが出てきたことでさらに激昂するお父さん。
そんなお父さんの姿を目の当たりにしたものだから体がでてしまう。
けど、やんわりと佐助さんに阻止されて前にはでれない。
心配になって服の裾を掴めば、なんだか佐助さんが優しく微笑んだような気がします。


「俺はお父さんが心配しているようなこと一切しません」

「信じられるわけないだろ!!お前みたいな男!!」

「それでも俺は約束します。陽榎ちゃんを…陽榎さんを誰よりも幸せにすると。一生護るって誓います」

「っ!帰るぞ陽榎っ!!」

「お父さん!!」


前触れもなく腕を掴まれて、引っ張られれば慌ててしまう。
佐助さんの方を見ても同じなのか、少し目を見開いていた。
このまま帰ってしまうのは嫌で、抵抗しようと思ったらお父さんの足が急に止まる。
どうしたのかと思えば、こっちに振り向くこともなくお父さんは叫んだ。


「お前が娘を傷付けた瞬間、俺は絶対にぶっ殺す!わかったな!!」

「大丈夫です。絶対にありえませんから」

「帰るぞ陽榎」

「う、うん…!」


なにがどうなったかなんてうまく理解は出来てないけど、後ろで手を振っている佐助さんに、優しく腕を掴んでいるお父さん。
涙があふれてしまうのはなぜなんだろう。



溢れてしまう
(止まらない愛情)






20110708
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