「あ、宿題あったっけ…」


明日のことを考えていたら、宿題がぱっと浮かび上がった。
片倉先生のだからやんないとキレるからなー…前に慶次がやってなくてキレた姿は本当に鬼だわ。
思わず背中から嫌な汗が出て急いでスクールバックをあさる。
あーもー、陽榎ちゃんとせっかく楽しくデートしてきたのに…!
嫌になっちゃうなー。


「ん?」


ピカピカと携帯電話が光っていることに気がついて何気なく開ければ、ビックリ仰天!みたいな感じになった。
この時間…ってか普段から滅多にこない陽榎ちゃんからの電話。
電話がこないだけであって、メールとか直接会ってたりするから破局なんてしてないよ。
そこのところ間違えないでよ!
何はともあれ、固まっていた俺様も慌て通話ボタンを押す。
切れちゃったらシャレにならないよ、本当に!


「もしもし!」

「あ、もしもし…佐助さん」

「よかった…間に合った…!」

「っ…」

「あ、どうしたの陽榎ちゃん?」


何か用かな?なんて返せば一切返ってこない返事。
どうしたのかな、なんて思っていても陽榎ちゃんからの返事はない。
え、本当にどうしちゃったんだろう。
いや、別れ話とかそんな重い雰囲気じゃないからいいんだけど、もしかして具合が悪いとか…?
それで安心するために俺様に電話をかけたとか…!!
だったらすっごい幸せ者だよね俺様!
……止めよう変な妄想。
これじゃあどこぞの保健室の変態と変わらないよね、うん。
ま、俺様はそんな危ない思考してもないけどね〜。
って、そんな場合じゃないや。
陽榎ちゃん、なんで電話をくれたんだろう?


「陽榎ちゃん?」

「あ、ちょっと…声が聞きたくなってしまったんです!」

「か、かわいいっ!!」

「へ?」

「な、なんでもないよっ!」


口からスルリと発してしまった言葉に羞恥心が掻き立てられる。
いや、うん。
可愛かったってのは事実なんだけど、それをストレートに言葉としてだすのは痛い人と思ったからね。
さっきも思ったけど、これじゃあ変態と大差がないってね。


「じゃあ…また、電話してもいいですか?」

「いいよーっ!!むしろ毎日頂戴ってね!!」

「ふふ、…また、明日です佐助さん」

「うん、また明日ね!」


多分、今の自分の顔は締まりが全くなくて、デレデレなんだろうと安易に想像できる。
それが悲しいとか、いけないことなんて絶対に思わないけどね。
電話を切って机に置きながら、陽榎ちゃんは愛らしくて仕方がないって考える。
可愛すぎるから独占したくなっちゃうんだよね、まったく!!


「へ?」


程なくしてピカピカとまた光だした携帯に驚く。
陽榎ちゃんはさっきよこしたからきっと陽榎ちゃんではない。
滅多に電話なんて…いつものメンバーならするか。
そう思うと苦笑しかでなくて、置いた携帯にまた手を伸ばして開く。
開いて目を見開いたのは、陽榎ちゃんと同じくらい人に電話をしない龍からであったからだ。
急用なのか、そう簡単に考えながら電話にでる。


「はーい」

「気の抜けた返事をすんな…!」

「ごめん、ごめん。で、どうしたの?」

「あ、ああ!!」


どこか切羽詰まったように、そしてどこか悲しみを含んでいる声で龍が携帯越しに叫ぶ。
急に叫ばれたものだから耳はガンガンと痛みを催して、それに対して顔が引き攣るのが俺様にも理解できる。
逆にこっちが叫んでやろうかとも思ったけど、やったら三倍返しじゃ済まないから絶対にやらない。
とりあえず呆れながらももう一度、携帯に耳を近づければ思いもしない言葉が聞こえた。


「陽榎しらねぇか!!??」

「は?」

「陽榎のやろう、両親と喧嘩して出てっちまったんだよ!!!!」

「なに、それ…笑えない冗談なんだけど」

「んなことで嘘がつけるかよ!!!」


ひどく焦った龍の声に俺様はどんどん頭が冷えていく感覚だ。
さっきまで電話していた。
様子がおかしかったのは…助けてって言いたかったからじゃないかと思える。
しっかりと言葉にはしてなかったけど、陽榎ちゃんにはどうしようもないほどの当惑があったんじゃないかな…それを俺様は…。
そんな不安な気持ちさえくんでやることも出来ず呑気に話し掛けてたなんて、馬鹿だ…大馬鹿だ俺様。


「まだ、場所わかんないの?」

「ああ」

「っ!」


どうするかなんてまだ何も決まってないのに、薄い上着を持って部屋から飛び出す。
母さんや父さんも何事かと出てきたけど、今は気にする暇もない。
少しでも早く陽榎ちゃんを見つけなければという気持ちが先走る。
携帯からも龍の狼狽した声が聞こえる。
慌て「また連絡する」って言って切ってしまう。
そうなれば、全力で走るだけだ。


*********


どこにいるかなんて全くわからないのに、気がつけば公園に走ってた。
彼女がたった一度家族で行ったという公園に。
そこにいるかは不確かなんだけど、でもどこか核心があった。


「はぁ、はぁ…!」


公園の入口で息を整えながら中を見渡す。
見渡す限りじゃ何も見つけることはできない。
場所、間違ってた?
諦めはじめたその時、キィキィと何かが動く音が聞こえた。
反射的にそこに向かって走り出せば見えてきたのはブランコ。
そして、そこに座っていたのは小さな金髪の少女−−ずっと探してた陽榎ちゃんだった。
小さな手でギュッとブランコを握り、頭を下げている姿は迷子になってしまった子供のようだ。
そんな姿に耐え切れず彼女の名前を呟けば、勢いよく上がる頭。

泣きそうな顔を見てわかったよ俺様。


「佐助さん…」


−−君は本当はすごく淋しがり屋な少女なんだって。



迷走して見つけた
(いつだって俺様が見つけるよ)






20110708
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