真紅の孤独 | ナノ

あなたの存在が

僕の痛みの全て



***



「…ユイさん……何処に行っていたんです?」

目の前で座り込む彼女に目線を合わせる。
すると、涙が溜まった瞳が僕を映し出した。

「……カ…ナト…くん」

怯えたように声を震わす彼女に、いつもとは違う違和感を感じてテディをギュッと抱き締める。

僕じゃない違う誰かに、彼女は畏怖している。
その理由は考えるまでもなく、ただひとつしかない。
彼女の首に掛かった髪を避ければ、僕のじゃない牙の痕が残っていた。

「……誰?…………誰に血をのませたんですか!」

力の抜けた彼女に詰め寄っても、彼女は口を開かず、痕を付けた奴を保護するようで腹が立つ。

彼女は僕のものだ。
彼女が僕を選んだと同時に僕は彼女を選んだ。
なのに、それを邪魔する奴が僕と彼女を引き裂く。

「………ユイさん…あなたは僕のものですよね?」

「……私は………誰のものでもっ」

彼女が言おうとした事を止めるため、細く白い首に手を掛ける。
体を駆け巡った怒りの感情に刃向かうことなどしない。

「……あなたは、僕のものです。………誰にも渡しません…」

手を掛けた首にある牙の痕の感触が彼女の所有権を物語っているようで、不快で仕方がない。
手をどけ、首筋に顔を近付ければ、この痕を付けた奴が分かる。

「…………アヤトですか」

「…ちがっ…」

違うと主張する彼女を僕は理解できない。
痕を見れば、アヤトだと一目瞭然なのに、彼女はアヤトを庇うように否定する。

「……何故、アヤトを庇うんですか?」

その質問に、あからさまに動揺した彼女は、自分が墓穴を掘っているのに気がついていない。

「………アヤトくんは…」

「あなたの口から、そんなもの聞きたくありませんっ!」

彼女は怯えた瞳で僕見て、「ごめんなさい」と誤り続ける。
それでも、僕の中でくすぶる火は消えることなく、体を焼いていく。

「…どうして、アヤトなんかに吸わせたんです?……そんなにアヤトがいいんですか?…………………あなたは、僕のものなのにっ!」

「……違っ……アヤトくんはっ…」

またも名前を口にした彼女の白い首筋に牙を立てる。
肌を貫く感覚に安心感を覚え、僕は首筋に幾つもの痕をつけていった。

「っ!……いっ…たぁ」

苦痛に歪む顔と涙を溜めて輝く瞳が、彼女を何よりも美しくする。
甘く痺れるような彼女の血は僕の体を巡り、彼女と同化するような感覚を与えてくるのだ。

「……はぁ……ユイさん……僕は、あなた以外どうでもいい。…………あなたも僕しか見ないで…」

「……いやっ…」

彼女が拒絶しても、僕は彼女を離すつもりなど更々ない。
たとえ、アヤトが彼女を選んだとしても。

僕が彼女に触れることだけが、この世の正義。









真紅の薔薇を捕まえた

それでも僕は、ひとり








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