君を呼ぶ名 | 「クリマ」 そう小さく呟いた。でもクリマの耳にはしっかり届いてたようで、ほんのり微笑みながら俺の方に振り向く。 「どうしたの? グロー」 「……」 なんとなく呼んだだけ、なんて言える勇気もない。俺はそっぽ向きながら「いや、特に」とぶっきらぼうに返してしまった。 「ふふ」と意味ありげに笑い、クリマは見据えていた先を見直していた。 その目線の先には、赤いバンダナがちらついた。それにすぐに気付いた俺はそのまま視線をそらし、本当にそっぽ向いてしまった。 なぁクリマ―― 後何回名前を呼べば、お前の心も向いてくれるんだ? |