05 -如月視点-
たっぷり水を含ませた髪に、シャンプーを馴染ませる。指に髪が引っかからないように優しく優しく。気持ちいいのか強張ってた体も程よくほぐれ、彷徨っていた手は降ろされ落ち着いていた。
少年の様子にふう、と息を漏らすと、その拍子に気が緩んだのか触れないように気を付けていた耳の付け根に指を当ててしまう。
「ふあっ!?」
その瞬間ビクッと肩が揺れ、尻尾の毛が逆立つ。
「や、みみ…、だめっ」
ふるふると震えながらこちらを振り返る瞳は潤み、風呂のせいか上気して染まった頬。
「…わ、悪い。すぐ流すから」
なんだ今のは。なんで俺はドキドキしてるんだ。少年の予想外の反応に戸惑いながら、丁寧に泡を流す。仕上げにトリートメントをすると、艶も手触りも十分に良くなった。
「よく頑張ったな。ほら、体冷えるから浴槽入ってろ」
合間に貯めていた浴槽のお湯はまだ半分程度だが、小柄な少年には十分な量だろう。水への抵抗は薄れたのか、少年は素直に浴槽に収まる。少年からの視線を感じつつ、着ていた服を脱ぐと自分の体を洗い始めた。
「そろそろ上がるか。おいで」
少年は浴槽から出ると猫のようにブルブルと頭を振り水気を飛ばした。浴室の外に用意しておいたバスタオルで少年の体を拭いてやる。雨で冷え切っていた体は、薄桃色に火照っていた。
そういえば、少年の服を用意していない。着ていた服はびしょ濡れだったし、何より汚れが目立つ。これは捨ててしまって問題ないだろう。いやむしろ捨てたい。
「とりあえずこれ着てみて」
代わりに俺のTシャツを被せると、やはりサイズはぶかぶかで尻辺りまですっぽりと隠れた。下着はさすがに用意出来ないが、家の中であれば問題ないだろう。
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