04 -如月視点-
嗚咽混じりに告げる少年の頭にそっと触れる。
「思わない」
一瞬だけ大きく目が開かれ、そしてすぐにまた涙ぐんだ。
「…ば、ばけもの、って」
「思わない」
「…おかしい、って」
「思わない」
「きたな、いって…」
「ああ、それは思ってる」
「ぐずっ」
途端にボロボロと涙をこぼし出す少年が可笑しくて、小さく笑いながら頭を撫でた。
「だから風呂入るぞ」
「……みず、きらい」
少年は涙でぐしゃぐしゃの顔を背ける。
「じゃあ、出て行くか?」
とはいえ風呂に入らないという選択肢を与える気はない。一刻も早く、この少年を洗い流したくてたまらないのだ。
「…やだ…」
脅すつもりの言葉も、また泣き出しそうな少年を見ると心苦しい。終わりが見えないやり取りに終止符を打つべく、半ば強引に抱き上げると問答無用で浴室に入り扉を閉めた。
「やだっ…やだやだ…!」
「怖いなら目つむってていいから」
小さくなって何度も首を振る少年に、なるべく恐怖を与えないようぬるめのお湯を足元からゆっくりと掛けてやる。
「…体、洗うぞ」
きゅっと両の目を瞑り耳を塞ぐ彼の体を、たっぷりと泡立てたスポンジでそっとこする。
「ぅ…」
くすぐったいのか時より身を捩りながらも大人しくしているので、少しは恐怖心が無くなったと期待してもいいだろう。
「次、頭洗うから上向いて」
「う、うえ…?」
「こう」
額に手を当てそのままぐいっと頭を傾ける。耳を塞いでいた手が離れ、行き場のなくなった両手はぱたぱたと空を掻いた。
「大丈夫」
顔にかからないように細心の注意を払いながらシャワーを当てる。シャワーを動かすたび耳がぴくぴくと動き面白い。
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