01 -如月視点-
ーー実家を出て2年目。ひとりで住んでいる小綺麗なアパートの隅に腰掛ける、恐らく少年であろう姿を見るのは、今日で3日目になろうとしていた。深くフードを被りその顔は見えないが、小さく頼りない幼げな体格は明らかに子供のものだ。
初めは近所の子供が家出でもしようと飛び出して来たんだと、それくらいにしか思わなかったのだが。もう3日も同じ場所、同じ服でそこに居るとなると気にならざるを得ない。微動だにしない少年を横目に、俺は大学へ向かった。
ーー書店でのバイトも終えてすっかり闇に染まった23時過ぎ。いつからか、静かに降り出した雨が肌寒さを感じる。車を降りアパートに入ろうと歩み出した足を止めた。
(…まだ、居た)
今朝と同じ場所で、少年は膝に顔を埋め蹲っていた。屋根がないそこは容赦無く雨が降り注ぎ、グレーだったはずの少年の衣服を黒く濡らしている。少年の肩は震え寒さを訴えているようだった。
…そっと、俺は少年に近付いてみる。
俺の気配を感じたのか偶然なのか、一瞬少年の体が小さく跳ねた。
「…行くとこないなら、家来る?」
少年はゆっくりとした動作で、黄金色に光る大きな瞳で俺を見上げた。
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