素直に言えたら
「おはよう!」
ーーAM8:10
いつも通りの時間、いつも通りの場所。笑顔で俺を迎える彼女が、少しだけ大人びて見えた。今日は彼女の誕生日なのだ。
「…おはよ」
いつも通り素っ気なく返す俺は、心の中で激しく後悔する。徹夜で考えたはずのお祝いの言葉は、彼女を一目見て全て飛んでしまったようだ。
「そういえば昨日ね、ーー」
彼女はいつも通り、楽しそうに話し出す。…ああ、タイミングを逃した。
ーーPM12:40
教室の片隅、女子生徒が集まる中心に彼女はいた。「お誕生日おめでとう!」「ケーキ食べよ〜!」はしゃぐ女子生徒を遠目に、俺はため息をこぼす。
この調子では一緒に昼飯を摂ることは出来ないだろう。仕方なく机の上に弁当を広げた。
ちらりと目線をやると視線がかち合う。眉を下げ口パクで「ごめんね」と告げ、その視線はすぐに俺から外れた。……大丈夫、まだチャンスはあるはず。
ーーPM4:50
「一緒に帰ろう!!」
さっきまでクラスメイトと話し込んでいたはずの彼女が、俺の顔を覗き込む。いつ言い出そうかとぐるぐる考えていた俺は、驚きで思考が停止する。
「…うん」
けれどこれはチャンスだ。誰にも邪魔されない、恐らく最後のチャンス。鞄を手に頷くと、嬉しそうな彼女と連れ立って学校を出た。
プレゼントだろうか。鞄をパンパンにして一生懸命に歩く姿に、速度を落とす。会話はほとんどない。少しだけ傾いた太陽を背に、ただ並んで歩いた。
……言うなら今だろう。
「…あのさ」
意を決して切り出すと、彼女が小さく笑った気がした。
「…誕生日、おめでとう。遅くなってごめん…」
「ふふっ。ありがとう」
小さな肩を震わせながら、彼女は嬉しそうな笑顔を見せた。
…もしかして、彼女はずっと言い出せなくてぐるぐるしていた俺に気付いていたのかもしれない。こうして一緒に帰ろうと誘ったのも。
全部、きっと彼女は分かっていたんだ。
不器用な俺のことを誰よりも分かってくれて、いつも笑顔で寄り添ってくれる。
「……いつもありがとう」
この先も、彼女の隣りを歩いていきたい。
(来年はもっと早く祝ってね)
(…ど、努力する…)
ユイユイ HAPPY BIRTH DAY!
心から愛を込めて。
2014.09.21
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