特別な日に


「…あのさ!」

ふわふわボブの黒髪を靡かせて、2歩先を歩く彼女はくるりと振り返った。

「どうしたの?」

俺に向けられる柔らかい笑顔に、少しの切なさと堪らない愛しさを感じる。

「今日は手でも繋いでみない?」

ぱちぱちと目を瞬かせる彼女に、左手を差し出してみる。

「…本当にどうしたの?」

「だめ?」

「もう、なんだか調子狂うなあ…」

照れ臭いのか、はにかむ彼女は俺の左手に右手をそっと重ねた。

少し汗ばむくらいの眩しい日差し。

どこか冷たさが残る春の風が、2人の間を抜けていった。

「…いい日だね」

今日が特別な日だから、なのか。

いつもよりも世界が明るく見えて、輝いて見えて、些細なことにも胸がくすぐったくなって。

幸せだ、なんて思って心が満ちていくような。

「…君に会えてよかった」

「ふふ、変なの」

クスクス笑う彼女の腕を、そっと引く。

すとんと素直に俺の腕に収まった彼女の耳元に口を寄せた。

「生まれて来てくれて、ありがとう」

君と出会えたことに、心からの感謝を込めて。





(大げさだなあ、もう)
(これから先も、ずっと言うよ)

あっちゃん HAPPY BIRTH DAY!
心から愛を込めて。

2014.05.12
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