不器用な嘘つき


「…ねぇ」

「ん?」

「嫌い」

読みかけの本から顔を上げたそいつに告げた。
どんな反応をするのかとドキドキ高鳴る鼓動を隠す。…けれど。

「…うん、知ってるよ」

動揺なんて微塵もない、むしろ飄々とした余裕すら感じさせる態度で微笑む。

…不満だ。こんなはずじゃなかったのに。

「…むかつく。嫌い」

「あれ?怒ったの?」

いつもと同じ無邪気な笑顔。
わがままを言っても困らせても変えないその表情を崩したくて、たまには怒らせてみたくて、吐いた言葉にも全く動じず。

それどころか私の方が振り回される結果になってしまっては本末転倒だ。

「…だってさ、」

そっぽを向く私に、そいつが近付く気配がする。

「嫌い、じゃなくて好きって言われてる気がするんだもん」

「はあっ?」

振り向いた瞬間、そいつの腕に捕まった。



(…余裕ぶってむかつく)
(俺のこと考えてぐるぐるする君が好き)


2014.04.01
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