【庭球/財ユウ】 ライブが終わった。そして雨。 今日は単独でのライブ。小春はいない。 部活に行こうにもこの雨。バケツをひっくり返したような、とはきっとこのこと。 この調子ならきっと室内練習に切り替えていることだろう。 でもそこに行くための傘がない。 濡れて行く? 仕方ないか。 覚悟を決めて一歩踏み出した。 それなのに腕を引かれて、屋根の下に引き戻された。 「濡れますよ」 そういうのは生意気な後輩。 手には傘。明るい赤色の折り畳み傘だった。 「お前部活はどないしてん」 「呼び出しされて今から行く所っすわ。ついでなんで入ってもいいですよ」 「よお言うわ。さっきのライブ見に来とったやろ」 入り口近くで、一番最後に入って、一番先に帰った。 知らない筈がない。 「気のせいちゃいますか。自惚れんのも大概にしてください」 行きますよ、と腕を引くのにつられて、少し小さい折りたたみ傘の中に二人収まった。 左肩と右肩。お互いの肩が濡れる。 「小さいな」 「我慢してください」 「別に、気にならんし」 ----------- 拍手ありがとうございました。 |