... おともだちのつくりかた

「いいなあ、たのしそうだなあ…」


天気がいい昼さがり。
わたしは王宮から塀のそとをながめていた。

なかよく走り回る、わたしとおなじくらいのこどもたちがみえる。

「いいなぁ〜…」

ふくのすそをぎゅうとつかむ。
きれいなかわいいドレス。

そとにいるこどものふくは、わたしのきているものよりやすいもの。
もちろんわたしのふくがずっとたかくてかわいいの。

もちろん食事だって、こうきゅうですごくおいしい。
おうちはものすごくひろくて。
めしつかいたちがいるから、わたしはなにもやらなくていい。

ほしい『物』は、なんでも手に入った。


でも、わたしはいつもひとりなの。

だいすきなおかあさまは、わたしがちいさいときにとつぜんいなくなってしまって。
おかあさまのやっていたことを、こんどはわたしがやることになって。
たくさんたくさん勉強した。
おかあさまがまもっていた、あいしていた、この国のために。

きづいたら、わたしのまわりにはおとなしかいなかった。

毎日まいにちおなじことをして。
まわりのおとなたちにちやほやされて。
こんなつまらない生活にしばりつけられて!

わたしだって!
おなじとしくらいの子といっしょにあそびたい!

いろんなとこたんけんして。
ふくもどろだらけにしちゃって。
たまにおとなの人におこられて。
あしたもあそぼうねって、夕日といっしょにおうちにかえるの。


うらやましかった。
そとにいる子は、みんなたのしそうなんだもの。
まわりには仲のいい子たちがいて。

わたしのまわりには、おとなたちしかいないから。
わたしになんどもあたまをさげる、つまらないおとなたち。
そんなおとなたちにかこまれるわたしの生活は、それはもうつまらなくて。

でもわたしはがんばらないとだめなの。
女王さまだから。
国で一番えらい人だから。
この国をまもらないといけないの。


だけど、どうして国をまもらないといけないわたしが、ひとりぼっちなんだろう。


なみだがこぼれだす。

「さみしいなあ」

あぁ、だめだめ。
わたしは、ないちゃだめなの。

「さみしい、なあ」

女王さまだから。
国で一番えらい人だから。

「うぅ…うえぇん…」

わたしがないてると、みんながしんぱいするから…。

「さみしいよぉ…」

そう、おかあさんに、おしえられたから…。


わたしも、『おともだち』が、ほしい。

たくさんいなくてもいいの。
ひとりだけでもかまわない。

ただ、『女王さまじゃないわたし』と遊んでくれる人がほしい。

「うぅ、ぐす…」

でもわたしは、国で一番えらい人で。
わたしとおなじ立場で、すなおになかよくしてくれるひとなんて、いない。
みんな立場を気にしてしまう。

「ひとりぼっちは、さみしいの…」


あーあ…。
ずうっとこんな生活をおくるのなら、

「女王さまになんて、なりたくなかった……」


「だれか、わたしのおともだちになってよ…」

そんなひと、いるわけない。
みんなわたしのことしってるもの。
わたしは、みんなのだいすきな女王さまだもの。

「だれか…っ」

だれもいるわけない。
そんなのわかってる。

でも。

「おともだちが、ほしいよう…」


どうやったらおともだちを、つくれるんだろう。





「……『つくる』?」



あぁ、そっか。

いないなら、


「おともだちを、『創れば』いいのか」



わたしは、へやをとびだした。
やっていた仕事なんて放り出して。
図書館にいって、いろんな本を持ち出す。
めしつかいたちとか部下があわてふためいている。
それをむしして、自分のへやにとじこもる。

わたしのもっている、このぼうだいな魔力があれば、

「きっと、創れる…!」

わたしがやろうとしてることが、やってはいけないことだとか。
そんなのはどうでもよかった。

ただ、わたしは『おともだち』がほしかっただけなの。


どんな子がいいだろう。

まじめでみんなをひっぱっていく子。
にこにこしててみんなをいやしてくれる子。
めんどくさがりだけどみんなをほうっておけない子。
すなおでちょっとわがままできらきらしてる子。
ちょっとおくびょうでみんなをよくみてる子。
げんきでなんでもちょうせんしちゃう子。
まけずぎらいですこしすなおじゃない子。
おっとりしててちょっぴりいたずらがすきな子。

たくさん創ろう。
魔力はいっぱいある。

どんなすがたがいいかな。
魔法はなにをつかうんだろう。
わたしのこと、「アレス」ってよんでほしいな。

すごく、わくわくしてる。
どんな子と出会えるんだろうって。
こんなにわくわくしたのは、ひさしぶりだな。
おかあさまがいるときぶりかな。

ふくざつな魔方陣を、床にかいていく。
もうすこし。

いつのまにか、夜になっていた。
わたしは、夢中で魔法をとなえる。

なにもたべてない。
はやくあいたくてしょうがない。


「ふぅっ……」

じゅんびがおわった。
あとはもう『創る』だけ。

そとはもう、朝日がのぼりはじめていた。

どきどきする。
れんしゅうはできない、いっぱつしょうぶ。

もししっぱいしたら。

なんて、考えもしなかった。

はやくあいたい。


さいごの魔法をとなえはじめる。

魔方陣が、まぶしいくらいに光りはじめた。

魔力が、みるみるなくなっていくのがわかる。

本がとびまわる。
窓ガラスがくだけちる。
部屋のなかはめちゃくちゃ。

まぶしくて、めがあけられない。

立っているだけでもせいいっぱい。

「ぅ、ぐぅぅ…!!」

からだが、ひきちぎられそう

まりょくがすいとられる

からだがいたい

うでが あしが あたまが しんぞうが

いたい

きをうしないそう

「ぐ、あああああぁ!!」

はねが、ちぎれたきがした

いたい

いきができない

くるしい

いたい


だけど

「ぁぁぁあああああああああっ!!!」


わくわくしてる。



まわりがぜんぶ、ふきとんだ。

わたしは、たおれる。

おわった。
せいこうしたのかな。

ぼろぼろになったからだを起こす。

まわりをみわたすと、

「あ……あぁ……!」


8つの人が、よこたわっていた。


空にはもう、たいようがのぼっていた。
きょうもいつもとかわらない、いい天気。

だけどきょうは、とてもとくべつな日になるの。


8つの人が、目をさます。

ちゃんと、ごあいさつしないとね。





「はじめまして、わたしの『おともだち』」


わたしと、『おともだち』になってほしいの。




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