▼ ばーか、俺もだっての
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海賊をやっていれば、腹に一発食らうなんてことは、よくあること。
当たり所が悪かったのか、血がだらだら出ちゃったりしてね。
こういう時って、昔のことを思い出したりしちゃってね。
昔のことで、一番最初に思い出すのは、まだ、若くて、今ほど強くはなかった頃。
サッチは頬の傷がなかったし、私は髪が短かった。
戦場で、劣勢で。
近くにはサッチがいて、ボロボロになりながらも髪形を気にしながら戦ってた。
ポリシーなんだとか。
私は、体力の限界が近いことを感じていた。
手の感覚がなくて、剣がすっぽ抜けるんじゃないかと思うほど。
息を整えながら、シャツを破って剣と手を固定してみるけど、それでも足手まといになりそうで不安だった。
よし!と気合を入れるためにサッチを見る。
きっとコレが終ったら、まだ、たいして美味しくはないけど、サッチがプリンを作ってくれるはずだもの。
どんなに劣勢でも、サッチがいたら負ける気はしなかった。
サッチとだから、サッチがいるから、頑張れる。
「なんだよ、アン。」
目があって私に気づいたサッチは、口についた血を手の甲でぐいっと拭って、少し不機嫌そう。
前髪が、はらはらっと落ちてきちゃってるからかな。
そういうところも、格好いいのに。
「ねぇサッチ、好き。大好き。」
別に、最後かもしれないからとかで言葉にしたわけではない。
気持ちがあふれて言葉になっただけ。
それはサッチも同じだったようで。
「ばーか、俺もだっての。」
「終ったら、二人でイイコトしようよ。」
「まじで。じゃー、お兄さん頑張っちゃおうかなぁ!」
本当に張り切りすぎて、頬に傷まで作って、大活躍したのはいい思い出。
うん、まだまだいける。
さて、サッチのプリンを食べに、頑張りますか。