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▼ 鬼さんこちら

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「アンってほんとバカだよね」
「うるさいなぁ!もうっ」

ハルタは意地悪だ。ものすごく。

「ちゃんと出来ると思ったんだって!」
「できてないでしょ。口で言うなら誰でも言えるよ」

・・・クソぅ。
その通りだけどそんなにはっきり言わなくたっていいとおもうんだ。

「ハルタのバーーーカ!!!!」

ムキー!と怒った私は捨て台詞を投げつけて食堂をあとにする。トランプでブリッジ作れるからってえらそうにするなっ。ちょっとすごいけどっ!
テッテっと廊下を走り抜けて甲板に出る。


「アンってほんとトロいよね」

ぎゃっ!
食堂で私を見送ったはずのハルタが甲板でニコニコ笑っていた。

「そんなスピードだとあっさり殺されちゃうね」
「う、うるさい!」

私は叫ぶ。
図星だからだ。確かに私は走るのが遅い。戦闘員としてこの船に乗っているのにこれは致命的だ。
だからってそんなにズバリと言うなんてひどい。ハルタはひどいやつだ。ちょっと可愛い顔してるからって言っていいことと悪いことってあるとおもう。

「ハルタのバーーーカ!!!!」

私はまたもや捨て台詞をぶつけて船内に戻った。ちょっと足が速いからってえらそうにするなっ。すっごくうらやましいけどっ!



「疲れたでしょ?飲めば?」

まただ。食堂に舞い戻ったら、ハルタはとっくに戻っていた。神出鬼没すぎるとおもう。なんでわたしの行く場所わかるの?

「そんな蛍光グリーンの液体なんて要らないよっ!絶対毒じゃん。飲んだらぽっくり逝くやつじゃん!!!」

私はまたムキーと怒る。
確かに疲れてるけどっ喉渇いたって思ってたけどっ!

「飲んだら一瞬で楽になれるのに」
「やっぱ毒じゃん!」

ハルタはいつもニコニコと微笑みながら空恐ろしいことを言う。本当にこわい。
私はハルタの格好のターゲットらしい。いつもいつも気付けば隣にいて、ニコニコとこわいことばっかり言う。逃げても追いかけてくる。むしろ何故かいつも逃げた先で待っている。テレパシーとか使えるのかもしれない。ハルタなら充分にあり得るとおもう。

「・・・なんでいっつも意地悪するの?追いかけてくるし」

私はかねてからの疑問を口にする。ずっと聞きたかったけど、いつも開けたらフタが吹っ飛ぶ変なにおいの瓶とか干した虹色のカエルとかを渡してくるからタイミングを逃していたのだ。だってそんなの渡されたってこわいし。逃げるしかないもん。

「え?好きだからに決まってるでしょ?」
「・・・へ?」
私はすごく間抜けな声を出してしまった。きっと顔もまぬけだ。

「ははは!アン今の顔かなりキモくて可愛いよ」

私はまたムキーと怒って逃げようとしたのに、何故だか身体が動かなくて顔がボッと赤くなった。

「ほら、これ飲みなよ。アンのために調合した栄養ドリンクだよ」


【鬼さん、こちら】
(あ、ありがとう・・)
(一晩寝込むけど、起きたら全回復してるから大丈夫だよ)
ゴクゴクゴ・・・・パタリ


大丈夫じゃねぇよ!と突っ込んで頂ければ幸い。



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