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▼ いつも通りはいつまでも

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後悔というのはいつも遅れてやってくるものだ。
後に悔いる、それが後悔だから。

「あ・・・ごめん」

アンに見つかった。
女の上に跨った状態のまま、その声を聞いた。パタンと小さな音を立てて閉まった扉を見つめたまま、機能、停止。

部屋にいたらナースが来た。長い付き合いのサバサバした女だ。何年も付き合っていたクルーと別れたのだと告げたナースは相変わらずサバサバしていたし、俺も古くからの友人として話を聞いてやった。

気がついたらキスをしていた。ベッドに沈んでいた。
こんなことをするつもりなんてかけらもなかったのに。
つまり、魔が差したのだ。

今までに何度も魔は差している。これで11回目だ。俺はアンをとても愛しているし、もう何年も付き合ってるけど飽きなんて感じたことはない。
当然別れるつもりなんて、毛頭ない。でも、気づけば女を抱いている。
罪悪感はある。事が終わればそれなりに後悔はするし、アンはいつも泣く。とても辛そうに涙を拭うアンの顔を見ると、自分が原因なのに俺まで泣きたくなって、そんな俺を見てアンはまた悲しそうに泣く。

「ごめんね」
「・・・そりゃあ俺の台詞だよい」

アンはいつも謝る。海賊の女で、しかも自分も海賊なのだからこういうことを許せない自分がだめなのだと言って、ゆるゆると俺の手を握るのだ。

「ちゃんとできなくて、ごめんね。頑張るからまだ離さないで」

だから俺は罪悪感と共に幸せも感じる。
アンは俺から離れない。
俺もアンから離れない。

だから、一緒。ずっと一緒。
何があっても俺たちは。


「あー・・・アンいるかい?」

通い慣れた部屋の前を何度も行ったり来たりして、声を掛けた。これで11回目だけど、いつも緊張する。返事はなかったけど扉は静かに開いたから、中に入ったら、アンは泣いていた。いつものように悲しそうに辛そうに歪むその顔に、俺はまた罪悪感と共に幸せを感じる。

「ごめんね」
「・・・そりゃあ俺の台詞だよい」

いつもと同じ。
アンは俺から離れない。
俺もアンから離れない。


「ちゃんとできなくて、ごめんね。もう頑張れないから、離して?」

俺を映すその瞳はいつも通り痛々しいのに、愛する女はなにかが吹っ切れたような穏やかさで笑った。


【いつも通りは、いつまでも、】
続かないことを知った4月28日深夜1時。




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