Before Short | ナノ


▼ 歪んだ空に浮かべられた真っ白な月の決意

[ name change ]



あの日のことはローには伝わっていないようだった。
お金で解決したという事実はロー本人が知れば当然反発心をもたらすに違いなくて、向こうの親がだんまりを決め込むのは至極もっともな流れ。
つまり私の方でうまくやれということだ。

私もその方がいいとおもう。
欲目を抜きにしてもローは私のことをすごく大事にしてくれてるから、私がお金を受け取ったと告げてもすんなりと離れてくれる気はしない。
もしこの事実を告げるとしたら、最終手段。
ローが私のことなんてどうでもいいと思うくらいに冷め切った時、ダメ押しとして告げるのがいいかもしれない。

週末の昼下がり。
木枯らしの吹く街を見下ろすカフェで私はそんな後ろ暗い計画を考えていた。


【歪んだ空に浮かべられた真っ白な月の決意】





今まで、アンと出逢うまで、女なんて気が向いたら食う程度のものでしかなかった。
物心ついた時から女に不自由した記憶なんざなくて、欲すれば適当に見繕った。俺の外見に、能力に、そして何より家柄に目が眩んだ頭の足りない女ばかり。そしてそいつらは頼みもせずとも自ら股を開くのだ。
うんざりしていた。飽き飽きしていた。

そんな俺を変えたのはアンだ。

変な女だと思った。
まず俺に惚れないことが理解できない。
近くにいても此方を見ることもなくて、俺から話しかけても嬉しそうな素振りは皆無。過度に着飾ることなければ、色気もクソもないのに、何故だか目を惹いた。

アンは初めて俺が自分から欲しいと思った女だった。
ずっとやら永遠やらと女じみたことを言うつもりはないが、こいつの命が尽きる時には誰よりも近くで見届けたいとは思う。
そのくらいには惚れているし手放す気も毛頭ない。

百々の詰まり、俺たちは死ぬまで一緒にいるんだろう。

だってそうだろう?
俺は手放す気はなくて、アンが俺から離れることなんざ、ありえねぇんだから。


【お前がいるから】
頑張れる、なんて口にする気は毛頭ねぇが。



[ back to short ][ back to top ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -