3年7組の10分休憩

選択の授業だった為、移動教室からクラスに戻る際にポケットに入れてた大耳のスマホが揺れる。画面を確認するとバレー部の後輩で同じポジションの角名からだった。

スマホ画面には『sunarinが写真を送信しました』と通知のみでメッセージはないらしい。バレー部のグループラインじゃなく個人の方に写真が送られてくることに珍しいなと思いながら、ラインを開いて確認してみるとつい笑い声が漏れた。

「信介、これ見てみ」

「何や」

隣を歩く北にそれを見せる為にスマホを渡すと北も同じように小さく「ふふ」と声を漏らした。

「角名は写真とるん上手いなあ」

「せやな」

角名から送られてきた写真というのは、どうやらこの間の部活中に撮ったものらしく、北となまえが写っていた。写真のアングル的に北は後ろ姿で表情は見えないがなまえは北を見上げて満面の笑みを浮かべている。何とも微笑ましい写真である。

いつもであれば、なまえの写真はグループラインの方の『なまえアルバム』に続々と上げられている。そのせいもあるのか、バレー部のアイコンはなまえ絡みが多い。双子はもちろん、大耳に写真を送ってきた角名のアイコンもなまえと角名がしゃがみ込んで野良猫を見てる後ろ姿である。

全面になまえとのツーショットを押し出してる侑や治と違って夕暮れが綺麗なちょっとお洒落な雰囲気が何とも角名らしい。そんな角名がアルバムではなく、こうして個人的に送りつけてる理由はその写真の中に写り込む2人の姿にあった。

「この双子の顔、傑作やわ」

「ほんまこいつらは大人気ないなぁ」

一見すると微笑ましい写真であるが、その写真をよく見るとなまえの従兄妹にあたる侑と治が苦虫を潰したような顔で写真の端に写り込んでいる。なんとも間抜けな顔で、大耳や北もつい声を上げて笑ってしまうレベル。これを共有のアルバムに上げればあの2人が黙ってないと判断した角名は、北にも見てもらうつもりで大耳に直接送ったのだろう。

「信介にえらいライバル意識持っとるからな」

「ライバルは俺だけやないねんけどな」

「なまえの初恋は信介やろ?」

北の言うことに大耳は、ん?と小さく首を傾げた。なまえの恋する相手は北である事はバレー部どころかなまえを知ってる稲荷崎生には周知の事実である。

北の真意が分からないまま、クラスに着いて席に座るとまたスマホが揺れる。またもや角名からで今度は動画だった。

『なまえ!今日は侑君が高い高いしたるで』

『たかいたかいは練くんにしてもらうねん』

『ツムはほっといて治君が宿題見たるでー』

『さっき路くんに見てもろた!』

『…』

『あ!アランくんさっきのかっこいいのもっかいして〜』

再生ボタンを押せば、なまえと双子が映る。双子よりも3年に懐いてるのが浮き彫りになったその動画では時折、撮影者の角名の笑い声が入っていた。なまえが尾白の元にかけていき、見事に振られた侑と治が立ち尽くして終わる何ともシュールな動画である。

一緒にスマホを覗き込んでいた北が「ほらな」と笑う。北が先程言ってたように双子溺愛のなまえを双子から引き離すことになるの北だけではないようだとその動画が証明しているようだった。信介の予測はほんまに当たるから怖いねんな…と大耳は苦笑いをした。


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