10年目の幼馴染

始まりは友人の何気ない一言。

「背が高い人ってカッコいいけど、付き合うと大変だよね」

ふむ、そんな考えがあったのか。キャッキャッと恋バナに友人たちが花を咲かせる中、孤爪なまえは1人真剣な表情でその話を聞いていた。

今までお付き合いしたことはあるが、そこまで考えたことがなかったし、そもそも長続きしたことが無い。どれも好きになって付き合った訳じゃなく、相手に告白されて始まったものだったし、私も相手より恋愛そのものに興味があってなんとなく付き合ってみただけなので長続きする訳がなかったのだ。

何度か試してみたし、私なりにも相手に合わせてみたのだけれど結局、みんなが夢中になる恋愛は私には魅力的な要素は何も感じられなくてつまらないだけだった。

私にとって不必要だと判断したこと、クロにも「興味本位で付き合うのは相手に失礼じゃねーの」と呆れながら言われたこともあり、それ以来は恋愛というものに縁がない。

「身長同じくらいがいいってこと?」

「んー、そういう訳じゃないけど身長差あると手繋いだり、キスとかハグとかも大変じゃん?」

「理想の身長差は15pってよく言うよね〜」

「へぇ」

恋愛には縁がないし、当分するつもりもないのだけれど気になってしまった。理想の身長差って本当なんだろうか、身長差あると何が不便なんだろう。気になりだしたら試さないと気が済まなくなるのが私の悪い癖だ。

「研磨、ちょっと手と胸貸して」

「嫌な予感しかしない…」

とりあえず家に帰って研磨でやってみたのだけれど、研磨とは身長が10pくらいしか変わらないこともあって、理想の身長差というのがよく分からなかった。こういう検証は比較対象が必要なので、踏み台を用意してもう一度チャレンジしようと思っていたら、その間に自室に逃げられていた。

「クロに頼めばいいじゃん」

もう一度お願いしようと扉をノックすれば、顔をちょびっとだけだして隣の幼馴染の名前をだした。「踏み台で身長差はつけれても、腕の長さや横幅は変わらないよ」と流暢にできない理由も添えて。

___


「ほんとお前の知的好奇心は、何とかならないのかね。…もしかしてだけどこれ無差別にやってないよな」

「昨日、研磨にしたら相手は信用出来る人しかやっちゃダメって言ってたからクロにしかしてないよ?」

「信用か、まぁいいか」

そんな訳で翌日の昼休みの今現在クロに試している訳だけど、思ったよりクロの腕の中がしっくりきていることにちょっと驚いた。なんだ、身長差あっても別に不便じゃないし、むしろクロは安心する。クロに思ったまま検証結果を伝えたけど返事はなかった。また呆れられてるのかもしれない。

「灰羽とかでも試したいんだけど」

「頼むから研磨の言うことを聞いてなさい」

「さすがに灰羽にやると後が大変だからやらないよ」

クロとの身長差が約30p。どうせなら音駒バレー部最高身長の灰羽で試したいと話せば、今度は無視されず大きなため息とともにクロの顔が私の肩にもたれかかる。少しくすぐったいけと嫌じゃない。

「クロ、重い」

「お前の検証に手伝ってんだからこれぐらい我慢しろ」

だけどやっぱり重くてクロに伝えるけれど、却下された。確かに我儘に付き合ってもらってる訳だし、少しくらい重いのは我慢しよう。そもそも、こうしてお昼休みを私の読書時間確保するために一緒に過ごしてもらってる恩もある。でも頬にあたる独特にはねた髪の毛がくすぐったくて、押さえつけるようとそっと撫でればガバっと勢いよくクロが顔をあげた。

「あ、ごめん。髪の毛あたるのくすぐったくて」

「いや、俺もびっくりした…だけですので」

「何で敬語?」

「うっせ」

ふいっと顔を逸らされる。そのままゆっくりと近すぎた距離が元に戻る。クロの気が済んだならまぁいいや、重かったし。私も検証できたことだし。時計を見れば予鈴の5分前で体育座りで膝に顔を埋めてるクロに声をかけると「1分だけ待って」と返ってきた。

多分私が原因だ。クロがこうして顔を隠したり、うなだれたり、バツが悪そうな顔をするのは大体私がしでかした後だ。何が原因かは分からないけど。私の興味本位でしでかすことに巻き込まれるのはクロか研磨か。研磨の方が上手く逃げるので大体クロなんだけれども。

「もっかい触ってもいい?」

「お好きにドーゾ」

「いつもごめんね。今度ご飯おごる」

「お前の知的好奇心にはもう慣れた。ま、飯は奢ってもらうけどね」

クロにはいつも迷惑かけて悪いなぁとは一応思ってる。私なりには少しは配慮してはいるつもりだ。だから今回は彼女がいるかと確認した訳だし。クロの髪をいじりながら謝罪をすると、クロは少し顔を上げて私を見ると仕方なさそうに笑った。クロがこうして研磨と同じように私のことも甘やかすので私はきっとこれからもクロから離れられないのだろう。

___


「海〜」

「ん?どうした」

クロと教室に向かう途中、廊下で海をみかけて声をかける。

「ちょっと手と胸貸して〜」

「ちょいちょいなまえサン!?さっき言ってたこと忘れたのかな!?研磨に言われたんでショ」

「? 研磨が(バレー部の)信用できる人ならいいんじゃないって言ってたから」

「…とりあえずそれに当てはまる人いってみなさい」

「研磨とクロと海。あと夜久」

「…」

「けど夜久は理由説明したら怒りそうだからしない」

「そーゆうのだけ気遣えるの辞めなさいよ」

海には相変わらずニコニコしたまま断られたし、クロも呆れたように大きなため息をつかれたけどやっぱりその原因は私には分からなかった。


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