よあけのさき28 | ナノ





よあけのさき28

 体を売る仕事を嫌悪しているのはラファル自身だ。運び屋も好きでしているわけではない。そうしなければ生きていけないからだ。目をそむけたのはアルベルトだった。ラファルは彼の瞳を追う。
「洗浄していない金は使い物にならない」
 アルベルトはそれだけ言うと立ち上がった。彼の秘書もそれに続き、部屋を出ていく。ランベルトは勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
 彼らを目で追いたかったが、ランベルトが腕を引く。ラファルはランベルトのひざの上に乗った。
 そんな気分ではなかったが、ランベルトがラファルのジーンズを脱がし始める。
「ラファル」
 名前を呼ばれたため、ラファルはランベルトを見た。
「ウェストン社のソテリオスを知ってる?」
 首を縦に振った。名前くらいなら聞いたことがある。経済界の重鎮だ。
「明日にでも会わせるから、しっかりここをほぐしておかないとね」
 ランベルトの指がアナルへ触れた。彼の意図は何か、考えないといけない。だが、性の快感でただれた体は思考力を奪う。ラファルは従順な姿勢で、彼の望むように抱かれた。

 ASホテルのロビーを抜けて、エレベーターを使い、最上階まで一気に上がる。先に歩いていたランベルトに続いて中へ入ると、ソテリオスがソファに座っていた。ソテリオスはベルナルドを想像させる。老齢であってもスーツの着こなしや仕草は美麗だった。
 ランベルトは短いあいさつをした後、部屋を出ていく。残されたラファルは目の前の男を見つめた。前線は退いているが、間違いなく経済界を引っ張っている男だ。室内には二人、護衛がいた。
「ベッドルームへ行きなさい」
 ラファルは左手にあるベッドルームへ入り、シャツのボタンを外そうとした。だが、背中を押されて、前に倒れる。手をついた時、ソテリオスはサディストかもしれない、と思った。もう一度くらい蹴られるかもしれない。経験から身構えると、やはり、背中に乗られた。
 ラファルは背後を確認しようとした。男の体重を背中に感じるが、ソテリオスではない。目の前に立つ男こそ、ソテリオスだからだ。口の中へ布のようなものを入れられた後、口と鼻を覆うようにハンカチが当てられる。苦しくて息ができない。
 呼吸に集中していると、突然、右手首をつかまれた。別の男が手の甲へ注射器の針を突き立てる。それが何か、ラファルには分からなかった。すぐにまぶたが重くなる。意識が落ちる寸前、ラファルはこれもプレイの一環なのだと思っていた。

 冷たい水を浴びたことで、ラファルは眠りから覚めた。自分が椅子に座っていることは分かったが、両手はうしろで拘束されていた。かすむ視界に何度か瞬きを繰り返していると、数人の男達が見えた。
 意識が戻ると、徐々に体が震え出す。水に濡れているからではなく、クスリを摂取する時間を過ぎているからだった。ラファルは状況を把握しようと、周囲を見回した。どこかの倉庫のようだが、ソテリオスとの関連性がなさ過ぎる。
「ラファル」
 アルベルトがこちらへ歩いてくる音が聞こえた。彼はラファルの前にしゃがみ、右手の指先にある錠剤のシートを見せる。仕事の前にもらったクスリだ。すぐにそれをくれ、と言いたかったが、ラファルの口には口枷が施されていた。
「ソテリオスから後三日程度、楽しみたいとランベルトに伝えてある。金の話をすれば、必ずソテリオスに接触してくると思っていた。どうして、おまえがここにいるのか分かるな?」
 ラファルはエバーグリーンの瞳ではなく、彼の指先を見つめた。今は何も考えられない。あのクスリをもらうためなら、自分は何でもするだろう。

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