よあけのさき17 | ナノ





よあけのさき17

 マウロと連絡の取り方を決めたラファルは大雨の降る中、駐車場からショッピングセンターの出入口へ歩いた。マウロは人目のない場所まで送ると言ったが、ベルナルドから与えられた携帯電話が何度も鳴っていると告げると、苦笑した。
 監視をまいたから連絡してきているのだろう。ラファルは出入口にあるベンチへ腰を下ろす。マウロは本当の名前を明かしてくれなかったが、フリーの情報屋であることは教えてくれた。
 ベルナルドとランベルトの情報が欲しいという話からすれば、おそらくマウロは次男アルベルト側についているのかもしれない。だが、ラファルはそこまで知りたいとも思わなかった。マウロがアルベルト側の人間であろうがなかろうが、大事なことは報酬を手に入れたという結果だった。
 マウロは先払いだと言って、ルチアーノの居場所を教えてくれた。雨で濡れた黒いシャツを脱ぎたいが、両手首に残るカフの擦れた痕をここでさらすわけにはいかない。
 ラファルは震えながら、携帯電話を取り出した。非通知設定からかかってきているため、かけ直しはできない。電話帳に登録されている番号へかけると、男の低い声が聞こえた。
 居場所を告げると、車を出すと言われる。しばらくの間、ラファルはガラスの自動ドアを打つ雨を眺めた。震えはひどくなる一方で、喉の渇きを異常なほど感じた。ポケットに触れると、錠剤を確認できる。
 黒い車が出入口の前に停まった。男が二人、中へ入ってくる。ラファルは車内へ連れ込まれた。
「誰と会っていた?」
 後部座席で挟まれるように座らされたラファルは、男からの問いかけに答えなかった。男はそれ以上、追求することはなく、目的の場所へ着くまで口を開かなかった。

 二階建ての博物館のような建物の中へ入ると、目の前にある階段を上がるように言われた。ラファルは手すりに手をかけて、ゆっくりと階段を上がっていく。うしろから男達がついて来た。
「左の奥だ」
 指示された方向へ進むと、扉の前に護衛が立っていた。門扉からセキュリティの高い屋敷だと感じたが、扉の向こうにいた人物を見て納得する。
「初めまして」
 ベルナルドに似た男が座椅子からほほ笑みかける。
「あぁ、親父の話通りだ」
 ランベルトは淡いブロンドの髪をかき上げ、品定めするようにブラウンの瞳でラファルを見つめる。
「話さなかったらしいね? 監視をまいて、誰に会ってたの?」
 ラファルはマウロから聞いた情報を思い返していた。ルチアーノはランベルトの別荘にいる。ここが彼の屋敷なのか別荘なのか分からないが、彼は確実にルチアーノの安否を知っている。
「監視なんかつけるから、まいただけだ。部下がどんなに使えないか分かっただろ?」
 うしろの二人が殺気立つ。ランベルトだけは声を立てて笑った。彼の視線がうしろの二人へ動く。うしろから足をかけられて、ラファルは前に倒れた。レッドブラウンの絨毯に両手をつかされて、男達がチェックをする。
 テーブルの上に携帯電話二つと渡されていたクスリが並べられる。四つ這いになり、うつむいていたラファルの目に黒い革靴が映る。ランベルトはラファルのあごを靴先で持ち上げた。
「震えてる」
 独り言のようにささやいたランベルトは、その視線をテーブル上のクスリへ向けた。
「ずいぶん我慢強いんだね。喉、渇かない? 細胞がこれを欲しいって言ってるだろ?」
 ラファルは左手でランベルトの右足を払う。すぐにうしろの男が、ラファルの右足を踏んだ。
「っあああ!」
 右足首に激痛が走る。ランベルトはラファルの携帯電話を操作して、ルチアーノのバイト仲間の名前を出した。

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