よあけのさき3
部屋にはベッドがあった。ベッドの前にある作業台やコンクリートの床に置きっ放しになっている鎖状の拘束具のほうが目立つ。作業台の引き出し部分にはあらゆる道具が入っていた。
ラファルは扉を背にして、左手にあるソファに座り、赤ワインを飲んでいる男へ視線を向けた。サントに協力している市警察の男だった。
「ラファル、久しぶりだな」
ラファルは短い返事をして、男の前にひざまずいた。男は味わうようにワインを飲み、しばらくラファルのことを見つめていた。初めての相手ではなかった。ラファルは大事な物へ触れるようにして、男のひざへ手を伸ばす。
何をすればいいのか、分かっている。ラファルはズボンのひざから太股へ指先を伸ばし、そのまま股間へ触れた。ペニスの形をなぞるように指先を動かす。チャックを下ろそうとすると、ベルトから外すように言われた。
ラファルは男のベルトを外す。ズボンと下着を少し下ろす時、男が腰をかすかに上げた。すでにたち上がっているペニスが頬をかすめる。ラファルはそれを口にした。
一度、深くくわえ込んでから離し、舌でゆっくりとなめる。男はソファの背もたれに大きく体をあずけていた。ラファルは根元の部分へ手をそえて、男のペニスを飲み込み、頭を上下させる。
男の手が髪をつかみ、激しく揺さぶってくる。そのたびに、喉の奥へペニスの先が当たり、吐き気を催したが、ラファルはくちびるの端から唾液が流れても耐えた。
「飲め」
ラファルは目を閉じて、男の精液を嚥下する。男は満足し、褒美だと言って、赤ワインのグラスを差し出した。ラファルは素直にそれを口にしてから、グラスを返す。
衣服を脱ぐように言われ、Tシャツとジーンズを脱いだ。下着も靴下も取ると、男が立ち上がる。
「昨日はサディストが相手だったのか?」
男は心配しているわけではなく、ラファルの体の傷を楽しんで眺めているようだった。
昨日の相手はサントだ。彼は時おり、痛めつけるようなセックスを好む。胸の突起につけられたリング状のニップルピアスには、サントの組織の人間であることが一目で分かるシンボルが刻んであった。
男はそのピアスをつまみ、少し引っ張る。
「っ、ア」
ラファルはくちびるを噛んだ。乳首はサントの手によってしっかりと開発された性感帯だった。
男の視線が胸や腹の上を滑り、熱を持ち始めたラファルのペニスヘと滑る。
「このさまだと、アナルもひどいことになってるんじゃないか?」
男はひどく面倒そうに言った。ラファルは硬めのベッドへ額をつけるようにして、自分の手で尻を持ち、アナルを男へ見せた。昨日はひどい夜だったが、サントがラファルのアナルを傷つけるはずがなかった。
引き出しからジェルを取り出した男が、押し入るように指を入れてくる。ラファルはコンクリートの壁を見つめる。物に見入ることで自分も同じように物になることができると考えたことがある。
だが、感じることに抵抗すると、感じるようにとクスリを打たれることがあったため、ラファルは壁を眺めても声を出すことは忘れない。乱暴に拡張を繰り返した指が出ていくと、代わりに男のペニスがアナルを突いた。
痛がると慣れているくせに、と言われる。実際、毎日のように使っているアナルに、痛みは少なかった。それでも、男達のペニスを受け入れる時、ラファルの感情は黒く染まる。布で目隠しされて、ゆっくりと鼻や口をふさがれていくような苦しみと、そういうことをしている自分と相手への嫌悪感が混じり、気分は最低だった。 |