※ラタトスク設定 ロイドとの再会、和解後
「会いたかった」
そう言ってロイドは思い切り私を抱きしめた。彼はまた背が高くなっていた。肩に額を乗せて、前はもう少し視線が近くはなかっただろうかと思う。すこし離れただけであっさり変わってしまうから、だから男は厄介だ。ずるい。 私も会いたかった、と言いたいのにそれを意地が邪魔して言葉にならなかった。 会いたかったと言ってくれるならどうして連れて行ってくれなかったの。 彼と分かれたときのことを思い出す。各々ひとりで行こうと言い出したのはロイドの方だった。 今になってみれば、彼はきっと私を巻き込みたくないと思ってくれたのだろう。だから何も言わずに行方を眩ましたのだ。 私は巻き込んでほしかったのに、ロイドは私の言い分をひとつも聞かなかった。巻き込んでほしかった。一緒にいて彼の力になりたかった。それとも私では足手まといだったから置いて行ったのか。
「なあ名前、怒ってるのか?黙ってたこと」
ロイドは肩を掴んで私の顔を覗き込んだ。ロイドはいつの間にかその一動作のために屈まなければならなくなっていた。 怒ってなんかいないけど、と言いかけて、彼の目が揺れていることに気付いた。
「怒ってないよ」 「……本当か?」 「怒ってない」
ロイドの手が頬を包んだ。優しい仕草だった。
「名前」 「怒ってないって」 「違うんだ。俺、あのときお前を連れて行かなかったのをずっと後悔してた」 「………うん」 「本当に会いたかったんだ」
変わらないものがある。 彼の率直な言葉と思案げに伏せられた睫毛の色。私を見る鳶色の目が絶対に嘘をつかないこと。 そして私がそんな彼を相手に意地を張り通せないことも。
「私も連れてけって言わなかった」 「…………ああ」 「でも本当は巻き込んでくれたらいいのにってずっと」
ロイドの腕がまた容赦なく私を抱き寄せた。肩口にすがった手で彼の相変わらず赤い服を掴む。 耳の近くでロイドの声がした。これからはずっと一緒だ。その言葉の意味を深く考えられないまま、私はロイドにすがりついて動けなかった。二度と離れてなんかやるもんか。
title by 獣
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