最高にハッピーでくだらない話

なまえは、ドレークがなまえを褒める言葉を口にした瞬間、眉を微かに顰めた。そして、ドレークはそれを見逃さない。なまえが、ドレークが褒めるたびに、表情を曇らせるのは初めてのことではなかったから、気にして注意を払っていたということもある。そうして、確信を深めたからこそ、ドレークは口を開く。

「なまえは、おれがなまえを褒めるたびに、嫌そうな顔をするね。それは、なぜ?」

口調こそやわらかいものの、詰問の雰囲気が滲むのは、おさえきれなかった。良いところは良いと、好きなことを好きだと、いっている。それだけに過ぎないのに、なぜなまえは喜ぶどころか、戸惑った顔をするのだろうか、とドレークは思う。最初は、たんなる疑問だった。しかし、予想した反応との小さな齟齬は、一度気になりはじめると、指先に刺さった棘のように、持続的に疼いた。ついには、気になって仕方がなくなった。なぜ、なまえは、褒められるたびに、顔を曇らせるのだろうか?と。

なまえは、小さく息をのむと、視線を彷徨わせて、俯いた。ドレークは、焦燥と苛立ちが背筋をのぼりそうになるのを、理性でおさえた。問い詰めるつもりはなかった。けれど、気まずそうななまえの表情をみて、疑念は確信へとかわった。なまえは、言葉で好意を示されることを嫌がっている。奥歯を噛んで、詰問の言葉をやりすごし、耐えて、なまえの返答を待つ。

「………そんなことないです」
「けれど、いつも、戸惑ったような顔をして俯いてしまう」
「それは………」

ちらりと一瞬あがったなまえの視線は、呼吸を挟むことなくかけられた、詰問するようなドレークの口調に、また、逃げた。

「ドレークさんが、その、あんまりにも大袈裟に、褒めるから」
「大袈裟……?」

頬を微かに朱に染めてぼそぼそと歯切れ悪くなまえは答える。しかし、まったく思い当たる節はございません、とでもいいたげに、ドレークは小首を傾げる。

「可愛いものを可愛いと、好きなものを好きだといって、何が悪い?おれがいわなかったところで、なまえの人を惹きつけてやまない可愛らしさも庇護欲をそそる愛らしさも、それでいて心根に芯がとおった凛とした魅力も、何もかわらない」
「だから、そういうのが、……!」

人前でもお構いなしにいうじゃないですか……と、泣き言を零すなまえをみて、ドレークは微笑んだ。その明るい青色の瞳には悪戯な色が浮かんでいることを、羞恥に顔をふせるなまえは知る由もない。


title by 星食

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