からめあわせた指先は、乾燥していて、冷たく、それは、彼の纏う雰囲気に呼応するかのように、ひやりとしていた。怜悧な目をして、つねに他人に興味がなさそうな様子で、それでも、観察はかかさない客観的な視線をあびせてくる、クロコダイルに、ぴったりな体温だとおもった。

隣にいるというのに、視線は、からまない。感情を、奥の奥に隠した、何を考えているのか読めない深い目は今、ぼんやりと空中を彷徨っている。不機嫌なわけでもないだろうに、眉には皺が刻まれている。きっと、もう、癖になっているのだろう。いつも愛飲する葉巻も、きっと、そう。息を吸う、瞬きをする、欠伸をする、そういう自然さをもってして、気づくと、口にしている。

からみあう手は、強く握られているわけではない。けれど、ある程度の意志を感じる強さでもって掴まれていた。徐々に、体温がうつって、熱が溜まる。肌が湿気をまとう。湿気を異様に嫌うくせに、クロコダイルは、繋いだ手をはなそうとはしない。

ふと、からみあう指を、ほどいてみようとした。そもそも、手をつないでいたところで、甘い睦言をかわすわけでもない。ただ、手をつないでいるだけ。クロコダイルは、気づくと、手を、指先をからめてくるときがある。何をきっかけにしているのかは、わからない。

指を軽くひらくようにして、そっと、引きぬこうとした。ゆっくりと、さり気なく、動きかけていた手は、しかし、クロコダイルの、少し骨ばったおおきな手によって制止される。意外なことに、心音が一瞬、不規則になる。ぎこちない動きで視線を動かして、クロコダイルをみあげてみても、そこにあるのは、素知らぬ顔。相変わらず、こちらを見もしない。けれど、握りなおされた手は、絡まりをさらに深くしている。

傍にいろ、と、すなおにいえないこの人のわかりにくい意思表示の仕方がこれなのだと、おもった。彼に染みついた習性なのだろう。息を吸う、瞬きをする、欠伸をする、そういう自然さをもってして、気づくと、手をとって、指をからめて、ひきとめている。それはきっと、もう、癖になっているのだろう。

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