恋みたいで落ち着かない

胸が、そわそわする。言葉にしてみると、抜けた響きとなるが、そうとしかあらわせないのだから仕方ない、と浮ついた思考のまま考える。たんたん、と苛立たしげに足踏みを繰り返す片足とは裏腹に、心はおどる。朝、なまえのいる部屋の前。唇を軽く噛みしめたまま、どうしたものかと立ち尽くしていた。片手には、まだ湯気をたてる暖かい朝餉。しかし、それを抱えて立ち尽くしている。どうにも、心臓が、落ち着かない。どくりどくりと脈拍ははやまる一方で、こわばる身体の背にはうっすらと汗をかいた。

どんな顔をして、なまえにあえばいいのか、声をかければいいのか、わからなかった。最初の一歩が、ふみだせない。顔をみたいのに、この薄い戸の奥になまえがいるとおもうと、気分が落ち着かず、平静を保てない。

わたしは、いったいどうしてしまったのだろうか。しかし、こんなにも不可解であるのに、心乱されることすら愉快に思うとは、本当に、どうかしている。どうかしていると思いつつ、逸る心はおさまらない。加速する一方の感情は、思考を放棄させ、そうして、いきおいよく戸を蹴破る勢いでなまえの部屋にはいるまで、あと3秒。

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