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視界からクロコダイルが消えたかとおもうと、ふわりと、下から抱えるように持ち上げられた。驚いて、クロコダイルの顔をみても、光の影となっていてよくわからない。

そうして、ベッドまで連れていかれると、優しくおろされた。スプリングが、キィと軽く鳴る。

右手が近づいてくると、反射的に身体が揺れた。その様子をみて、クロコダイルはふっと穏やかに笑った。一瞬のためらいらしきものを見せたあと、ゆっくりと優しく頬に手のひらが沿わされた。

「今日は優しくしてやる」

口元が弧を描き、ゆるく微笑みの形をつくる。その笑い方が、いままでに見たことないもので戸惑うとともに、胸が自然と高鳴った。

暖かく、でも少し固い男の人の手のひら。それで、頬を包み込まれた。親指が優しく目元をぬぐう。どうしたんだろう、今日のこの人はとても優しい。

手のひらが、顔から首、そして腕を沿って手首におりてくる。痣が残ってしまったところを、そっとなぞられた。

「傷の具合は、どうだ…………跡が残っちまったな」と、残念そうな声が漏れる。
「……だ、だいじょうぶです」

元々、雑務が多くて生傷は多かったのだ。これくらいの痣など、たとえ残っても大したことではない。それなのに、手首をつかんで持ち上げると、彼は唇をよせてキスを落とす。唇の間から赤い舌がのぞき、傷跡をたどった。そのまま、こちらを見やるとにやりと笑う。

鼓動が高鳴った。この人は、いったいどうしてしまったのだ。らしくないことの連続に困惑する。目を白黒させているわたしを前にして、少し悪戯っぽい声色で、「今日は優しくしてやると、言ったろう? 」と。

恥ずかしさと照れから、自由になる方の腕で思わず顔を覆うと、クハハと面白そうに笑う。

「かわいいじゃねぇか……、なまえ。酷いことしちまって、………悪かった」

艶っぽい声で、耳元にふきこまれる。息が、声が、その身体に響くような声が、全身を熱くさせた。目には理由もなく涙が浮かんだ。

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