腰骨を、ベックマンのかさついた指先がなぞると、なまえの唇から吐息のような声がもれた。「ちょっと触れただけだろう?」と苦笑交じりにベックマンが零すと、なまえは唇をとがらせる。
「くすぐったいのは、仕方ないじゃない」となまえは、ベッドに仰向けに寝ていたのを、ベックマンの手から逃げるようにうつ伏せに転がる。ベックマンは静かに片眉をあげた。くすぐったがりなのは知っていたが、ここまでとは。
片腕で身体をおこすと、逃げたなまえの腰をとらえて、また仰向けに。こちらをむいたなまえは怪訝な表情をしている。つい笑みが零れた。まるで、小動物のようだと思った。小動物が、全身を緊張させながら、こちらの挙動をみつめているときに似ている。
今度は逃げられないように――、となまえの肩を片手でそっと抑え、もう一方でなまえの寝間着を捲る。白い腹があらわになる。唇をよせると、肌が反応してぴくりと震えた。やわらかい横腹から、下へ降りていく。少し浮き出た腰骨までたどりつくと、唇をひらいて優しく食んだ。
「ん……ッ」
すると、すぐに可愛らしい声がもれる。頬がゆるむと同時に、身体の奥に小さな火がついた。触れたままだった唇を少し離して、垂れた前髪を掻き上げた。なまえは紅い顔をしてこちらをみていた。ベックマンは、ひとつ、溜息をついて目を伏せた。
「………あまり、そそってくれるな」
吐息に反応したなまえの身体は、また小さく震えた。