掌なら懇願

白い包帯がクルクルと、なまえの足にまかれていく。困ったように眉をさげたなまえと、眉を顰めたエネルがふたり。なまえは椅子に腰かけ、エネルは傅くように床に片膝をついて、なまえの足に包帯を巻いている。その仕草は器用だったが、なまえは、ちょっと足を切っただけなのに大袈裟な、と内心嘆息した。侍従の者がみたら卒倒しそうな光景だが、人払いが済ませてあるため、ふたりきりだった。

「―――だから、散々いっただろう。靴を履け、と。皆、履いているというのに、何故なまえは拒む。いくら島雲といえども、屋内とは違う。鋭利なものが落ちていたら、足の裏を切る。足の裏の怪我はなおりにくい。もう、島雲をふむ感覚が気持ちいいなどという戯言は聞かんぞ」

ぶつくさと文句をいいながら、エネルの手際は良い。あっという間に処置が終わってしまった。仕上げをすませると、口を噤んだままのなまえをエネルは見上げる。

「返事は?」
「…………はい」

不承不承といった様子で返事をしたなまえに「よろしい」と、エネルは鷹揚と頷いた。膝の上におかれたままのなまえの片手をとると、手に鼻先を押しつけ、唇で手のひらにふれた。そのまま喋るものだから、くぐもった声がでる。「それで、いい」という呟きが、なまえの皮膚を震わせた。

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