腿なら支配

痛みに、悲鳴とも喘ぎともわからない吐息がもれた。キッドが喉の奥をならして笑う声が聞こえた。

「―――ッ!!」

太腿を噛まれた。歯型がくっきりと、柔らかい素膚に赤々と残っている。日に晒されないため、白いままの太腿についたそれは、酷く扇情的にみえた。噛み痕をキッドの紅い舌がちろりと舐めた。それから優しいキスがひとつ。それでも傷は疼くように痛い。怒りの文句がでるも、やはり声は押し殺したまま。

「キッド、痛い……!なにするの!」
「なまえが、ヤってるつーのに、まともに声をださねえのがいけない」
「そんな、船の中で、」
―――はしたなく、あられもなく、喘げない。そう続けようとした口は、乱暴な口づけでふさがれた。キッドの手が、先ほど噛みついた場所を撫で、腿を割り、薄い布地の上から身体を撫でた。嬌声があがりそうになり、反射的に押し殺した。キッドが不機嫌そうに眉を顰める。荒い口づけから解放されて、肩で息をしながら、キッドをにらむ。口は相変わらず、つぐんだまま。

「だから、その、我慢するのをやめろっていってんだよ」
「だって、」
「聞きたいやつには聞かせてやりゃあ、いいんだ。それに、」

その方が、興奮すンだろ?―――熱く湿った声が鼓膜に吹きこまれて、心臓は確かにどくんと跳ねたのに、そんなことを思うのはおまえだけだバカヤローと、心の中で悪態をついた。

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