鼻梁なら愛玩

クロの鼻筋は細く高い。そうして、鼻の付け根からのびる眉も、まるで筆で一直線に払ったかのようにひかれているから、酷く神経質そうにみえる―――というか実際、神経質だと思う。

そのせいか、眼鏡を外したときのクロの鼻梁にのこる、眼鏡の跡はとても可愛らしくみえる。いつも隙のなくぴっちりと決めているクロにのこる、ほころびのような気がして。そんなこと、本人には決していえないけれど。

いま、わたしを腕の中に抱くクロの顔に、眼鏡はない。鼻梁にのこるのは、眼鏡のあと。指先で鼻をなぞると、くすぐったそうに目を細めた。頬がゆるむ。クロは時々、猫のような顔をする。それが、とても可愛い。クロの頬を両手でつつんで、顔をよせると、鼻を擦りあわせるようにしてから鼻先にキスをした。

怪訝そうな顔をするクロに、「眼鏡のあと、ついてる」というと、ますます理解不能といった様子で眉の皺が深くなる。可愛い、なんていったらどんな顔をするだろう。想像すると笑いそうになったけれど、すんでのところで噛み殺した。

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