瞼なら憧憬

ミホークが、瞼を閉じて深く椅子に腰かけていた。組んだ足の上で軽く絡めた両手を休ませている。背筋はピンと伸びている。もしかしたら、微睡んでいるだけかもしれないし、瞳を閉じて休んでいるのかもしれない。

いずれにしても、声をかけるのが躊躇われた。なまえは、静かに、足音をたてないように近寄る。ミホークの瞳はまだ開かない。瞼の奥に閉ざされたまま。

人の気配に敏いミホークのこと。きっと、気づいているだろう、となまえは思う。けれど、こうして瞳を閉じている姿をみるのは珍しい。ミホークの朝はなまえよりはやく、夜はなまえより遅い。逸る胸をおさえて、息をころす。

二重の皺が切れ長の瞳にそって綺麗に刻まれている、そんなことまではっきりとみえる距離。髪と同じ色をした睫毛が、目元に影を落としている。相変わらず心臓の音はうるさくなっている。あらためて、目の前のこの人が好きだと思った。愛おしさが込みあげる。

そっと、ふれるだけのキスを眦に落とした。唇がふれた瞬間、小さな音が鳴る。距離をとって、またミホークの顔をみるも、瞼は閉じられたまま。なまえは、首を小さく傾げる。本当に寝ているのだろうか、となまえが疑いはじめたそのとき、なまえの腰を掴む強い力に、立ったままの身体のバランスが崩れる。そのまま、ミホークの胸に抱きとめられた。

あわてて顔をみあげると、口元が愉しそうな弧を描いている。あ、やっぱり気づいていたんだ、となまえが頬を赤く染めるころ、おかえし、とばかりに唇があわせられた。

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